事前のマスコミの予想は、自民党苦戦のオンパレードでしたが、蓋を開けてみれば、自民党単独で絶対安定多数を獲得することになりました。
その要因を考えてみますと、
● 現政権が発足後10日で解散となり、評価のしようがない時期での選挙であった。
● 安陪、菅政権への不満はあっても、野党への信頼を持てない人が多数であった。
● 大臣経験者などベテラン議員については、コロナ禍の行いなどで信頼に足らないことが明らかになって、多くが小選挙区で敗北したが、一部を除くほとんどは比例復活当選したので、野党統一候補が小選挙区で勝利しても自民大物議員の落選とはならなかった。
● 投票率が低く、組織票が”もの”を言った。(現政権に批判的な多数の浮動票が投票に結びつかなかった。)
● ここ数年、国政の場で野党の存在感が 薄かった。(逆に言うと、大阪での維新の会の実績を背景にした信頼感が日本維新の会の躍進につながった。)
総じて、自民党を積極的に信頼できないが、と言って立憲民主党はじめ野党へ政権を渡すことに不安であるひとが多数であったのでしょう。私は個人的には、国民のこの感覚はわかるのですが、これまでの自民党の国民の声を無視した強硬路線を反省させるためには、野党の躍進を期待していました。例え、公明党との連立で過半数を獲得し、自民党が引き続き政権運営を担ったとしても、これまでのやり方では駄目だという危機感を持ってもらうほどの自民党への厳しい審判を下してもらいたかったのです。
岸田総理が、この選挙結果で、現政権への信任を得たと語っていたそうですが、たった10日の政権に、是非を判断するのは無理ですので、とりあえず続けさせてもらったというのが正しい認識であるはずです。そのように謙虚に受け止めておられればいいのですが、どうも信任を得たという言い方がひっかかります。政権の思う通りやっていいと過大評価し、前、前々政権と同じような国民不在の強硬路線を突っ走らないか心配です。岸田総理は、総裁選のとき、格差是正を強く仰っていたのですが、その後、分配の前にまず成長(分配にすぐ手をつけるつもりはないということでしょうか)、また、富裕層の税制優遇是正のトーンダウンを聞いていますと、陰の声からの圧力に屈し始めているとも勘繰られる変容に驚かされました。本気で格差是正をしたいのなら、大企業、富裕層から膨大な富の一部を回収し、困っておられる層に分配するのであればすぐ出来ることである思います。菅前総理をWEタイプの能吏と評しましたが、岸田総理は、WEタイプのお人好しに感じられます。どうか、この勘が外れていて欲しいものです。これからの、政権運営をじっくり見守りたいと思います。