人類の歴史で、国家という集合体が出来て以来、国家間の戦争が繰り返されています。宗教や主義の違いによる戦争もありますが、領土拡大による生産物、収穫物、戦略的地域の拡大を狙ったものがほとんどです。今回のロシアによるウクライナ侵攻も、対面上は、新ロシア系住民の保護やネオナチの討伐を目的としていますが、本心は、ウクライナが西側陣営に入ればロシアに地理的な脅威となることが大きいのではないでしょうか。プーチン大統領は、歴史的にウクライナはロシアの一部だから奪還するのが必然のようなことを言っていますが、ようするに、プーチン自身の権力や安全への脅威とウクライナを支配する支配欲から発しているのだと思います。
独裁者は、国家の為、国民の為、民族の為に戦争をするのだと、いつも己の行動を正当化しようとしていますが、本心は、国家は自分のものであり、国民は自分の僕(しもべ)であり、民族は自分の生まれ素性を特別視させるものであると思っているのです。だから、国が世界から孤立しようが、国民が死のうが平気なのです。独裁者自身の野望の達成がすべてなのです。
この真実をうまく隠す為に、愛国心と言うものを全面的に押し出し、その高揚に水を差すものはすべて情報統制で隠すのです。多くの国民の方も、自分に害が及ばないように、敢えて飾られた情報を信じ、独裁者を支持し続けるのです。
この両者のバランスがとれているときには、中々その独裁は止められないのです。今のロシアはまだ微妙にバランスがとれているようです。その背景には、ウクライナでの戦局はきちんと国民には伝えられていませんし、欧米の経済制裁もエネルギーや穀物の輸出による外貨稼ぎでそれほど深刻な状態には陥っていないようです。しかし、このバランスは非常に微妙なもので、これ以上戦死者が増えて、戦果もさほど上がらないとなったり、西側陣営のエネルギー調達のやり繰りがロシアを抜きにした構図を描けるようになったりすれば、ロシア国民も真実に気付くことになると思います。そのとき、初めて、プーチンが国民ではなく、プーチン自身の野望のために、戦争を仕掛けていると理解出来るようになるのではないでしょうか。
もともと、歴史を紐解いても、侵略戦争で国民のためになった例は無いと思います。すべてが一部の権力者、特権階級の権力、富の維持拡大、支配欲の為になされたものであります。大多数の一般民衆にとって、侵略など必要ないのです。その必要ない国民達が血を流し、経済的に貧困化し、打撃をまともに受けるのです。だから、国民の為のリーダーであれば、国民をそのような状況に陥れる侵略戦争などはじめる訳はありません。