最近のジャニーズ事務所のニュースに接して、リーダーの資質に関して感じることがありました。ジャニーズ事務所は、故ジャニー喜多川氏が設立し、姉の故メリー氏が経営面で補佐する体制で成長して来た芸能事務所です。二人の中心メンバーが亡くなり、メリー氏の娘の藤島ジュリー景子氏が社長、ジャニー氏の後継者と言われた滝沢氏が副社長を務めていましたが、今回、滝沢氏が退任し、事務所を離れることになったと言うことでした。その原因についてはいろいろと取り沙汰されていまして、その真偽はわかりませんが、若手の育成や演出力で定評のあった滝沢氏が離れることはこの事務所に大きな打撃となると思います。
 
 創業者が亡くなり、その後継者としての親族と実務で力を発揮していた人間が袂を分かつと言った企業のお家騒動ではよくある状況です。このような場合、後を継いだリーダーは会社の総合力の維持・向上を一番に考え、創業者の評価した社員をきちんと活かすことが求められますが、なかなかそうはならない場合が多いのです。それは、社長と言うリーダーに就いた人間が、自分がすべて決めるべきと肩に力が入り、自身の考え方に合わない人間は活かすのではなく排除する方向に進んでしまうからです。リーダーも人間ですから、すべてに秀でている訳はありませんし、すべてに正しい判断を出来る訳でもないと言う現実に謙虚に向き合い、例え意の違うものでも、その者の持つ優れた点を活かすように対応し、処遇することが大切です。リーダーは自分がすべて引っ張る、すべて自分の考え方通り進めたいとリーダーシップを間違って捉えていることがよくありますが、本当は、組織に所属する人間の良い所を引っ張り上げ、悪い所は他の人にカバーさせ、最大限の総合力を発揮させることが必要なのです。例え、感情的に合わない人であろうが、好まない相性の人であろうが、その人の持つ強みを認識し、それを如何に発揮させるかに腐心しなければなりません。

 今回のジャニーズ事務所の場合でも、間違いなく会社に役に立つ才能を持つ人間がやる気を無くすか、押さえつけられることは、会社にとっては非常に損失なのです。そこを個人的な感情を抑えて、会社の為に活かすようにすることがリーダーに求められる重要な資質のひとつなのです。
 
 このようなリーダーの資質は、世襲されたリーダーにはなかなか見られないことが多いのです。二世など、血のつながりで獲得したリーダーの地位はなかなか難しい問題をはらんでいます。だいたい成功した創業者はカリスマ性がありますし、その業務においての卓越した能力を持っている場合が多く、血がつながっているからと言って後継者にそのような才能が備わっている訳ではありません。それなのに、創業者のような権力を発揮しようとしてしまいがちです。そうすると能力のある社員から反発される場合が多いです。本当は、謙虚に自分の未熟なことを認め、全社員が自分をサポートしてくれるように振る舞わないといけないのです。そのようにして組織を一体化して、仕事を進めていく内に、自分自身の強みを発見し、自分の色を少しづつ出していき、成功体験を少しづつ積み重ねていくべきなのです。逆に、そのようなことが判らないリーダーは急に周りのイエスマンから持ち上げられると勘違いして自分は偉いんだと言う錯覚に陥ることが一番怖いことなのです。そういうケースが特に世襲してリーダーの地位を得た人が成り易いので、本当は、世襲での地位移譲は相当慎重になるべきですが、創業者が厳格な意味で後継者を育てられなくて、安易に子供や親族に委ねてしまうことが一因でもあります。

 リーダーは、自分の感情的な面は抑え、組織の総合力を発揮できる為にはイエスマンばかりではなくすべての社員を活かすように進めることが重要です。そして、リーダーは早い段階から、自分の後継者を育成することも大切です。そしてその後継者が血縁の在り無しに関わらずに、組織の全人間に受け入れられるように環境を整えてから、その地位を移譲すべきだと思います。これも重要なリーダーの仕事なのです。