テレビで、有名なニュースキャスターが今のウクライナを訪問し取材している番組を見ました。昨年2月の開戦からもう少しで一年間が経過し、ウクライナ、ロシア両国とも10万人以上の戦死者が出ているようです。ウクライナキーウにある戦争博物館には、今回の戦争でのロシア兵の遺品も展示されていました。その中で、ロシア兵の日記があり、訓練と言われ派遣されたらウクライナに着いていて、いつの間にか戦闘に巻き込まれ、非常に困惑している心情やロシアのエリート達は、兵隊の命などちっとも気にもかけていないと強く嘆いていました。
プーチン大統領以下ロシアの幹部エリート達は若き命が多数消えて行っていることにどうして平気でいられるのでしょうか。この疑問へのヒントとなるような場面もありました。それは、戦争博物館の遺品に記入されていた電話番号へ取材している中に、息子が戦死した母につながったケースがありました。その母は息子の死に対して堪え切れない感情を終始剝き出しにしていましたが、最後にそれでもプーチン大統領は国を守ってくれていて正しいと信じている、と言ったのです。衝撃でした。プーチン大統領がこの侵略を実行しなければ、彼女の息子は死なずに済んだ訳なのに、本当ならプーチン大統領を仇として恨んでいるのかと思っていたのですが、その逆でした。このような国民がプーチン大統領を支持しているのですから、これだけの戦死者を出しても、エリート達は平気で戦争を続けていられるのです。彼らの本心は、国の為などでは無く、自分達の欲望達成の為だと思いますが、それを国の為、国民の為と誤魔化しているから、本当は一般の国民が死んでも平気なのです。しかし国民はその真実を分かっていないのです。
このような集団心理のコントロールは、いろいろな戦争で見られています。太平洋戦争時の日本でもそうだったと思います。多くの国民がまるで集団催眠にかかったように戦争を進めることに熱を持って行きました。戦争の真実に気付いた一部の国民を非国民として蔑視したのです。
独裁的な権力者は、言葉では自分の考え方を正しいと説明できないから(つまり、正しくないから)、武力を使うのです。本当に正しい指導者は話し合いで解決します。少なくとも話し合いで解決することを第一優先で努力し、敢えて軍事力に頼るのは、一方的に攻撃されたときだけなのです。民主主義国家は基本的にこのスタンスの国がほとんどなのですが、米国がかつて、ベトナム戦争、湾岸戦争などで見せた行動が、侵略戦争ではなかったのという疑問が存在します。このことを、独裁国家であるロシア、中国、北朝鮮がうまく反論として使っているのです。米国の言い分は、このまま放置していれば、我が国や友好国がいずれ攻撃され、甚大な被害を被る可能性があるから、先制攻撃するのだと言うことだったと思います。ロシアの言い分は、今回のウクライナへの特別軍事行動(本当は侵略戦争)は米国と同じなのだから、何が悪いのかと言うことなのです。
いずれにせよ、自国民の為と言うのであれば、戦争をしないこと、戦争に自国民を派遣しないことが一番重要なことなので、戦争を避ける為の外交、話し合いが王道なのです。どんな理屈を並べても他国を軍事的に侵略、攻撃することは、自国民の為ではなく、自分の欲望達成の為なのです。