米国トランプ大統領が就任し、ロシアによるウクライナ侵略戦争を終結させようとする動きが活発化しています。しかし、その動きは、米国とロシアの思惑が主となり、ウクライナ抜きで交渉されていると言われています。

 連日、多数の死傷者が出ているこの戦争を一日も早く停戦すべきだと誰もが思っていると思います。それこそ、トランプ大統領もプーチン大統領も、多くの人間の命を奪うことは一刻も早く止めなければならないと、停戦のテーブルにつきたいと言っているそうです。この戦争の原因となるプーチン大統領がよくそんなことが言えると思いますが、かと言って、停戦によって、今後失われる命を少しでも救うことはとても重要なことなので、そもそも論は棚に上げても、停戦をいち早く実現することが必要だと思います。

 もちろんウクライナだって、停戦を望んでいると思いますが、しかし、ウクライナにとって停戦の条件が非常に悩ましいものになりそうなことは想像がつきます。旧領土を全て回復出来るのがウクライナの望みではありますが、それであればロシアが合意することは無いと思われるからです。現在のウクライナの民意は、一部の領土をロシアに渡しても平和を優先したいという声より、そんな条件を飲むのなら戦争を継続した方がいいという声の方が多いと言われています。

 ウクライナにとって本当に難しい選択になるのです。私の個人的な意見は、戦争終結することが第一優先と考えたいと思いますが、そうであれば、これまで戦争で亡くなった国民の犠牲を無駄にするのかという葛藤が起きると思います。この点が非常に悩ましいのです。しかし、私は、一刻も早く停戦し、将来の犠牲者を無くすことを優先したいと思います。命は取り返せないのですから。

 太平洋戦争に日本は無条件で降伏しました。その時点では、国民の状況はどん底であったと思いますが、残った命があったからこそ、今の状況につながったと思います。幸いにも、植民地にもされずに、民主主義国家として存続を許されたことが大きかったのだと思います。ドイツだって、国が分裂し、悲惨な状態が想像されましたが、現在のような繁栄を得ています。戦争状態が続くより、悲惨な状態ではあっても、平和で復興にかけられる世の中の方が、国民が歯を食いしばって頑張れば、きっと明るい未来につながる可能性が高いのです。

 そういうことから、ウクライナにも、停戦を第一に考えるのがいいと思うのです。今なら、日本やドイツよりはもっと良い条件で停戦合意が出来ると思います。少なくとも領土回復は望めなくとも、ロシアの属国になることは避けられると思います。

 この考えがウクライナの国民の多くに受け入れられないのは、ロシア領土となる地域に住むウクライナ国民がいること、今は停戦に至っても、またロシアが侵略を繰り返すかもしれないことが考えられるからだと思います。

 だからこそ、停戦条件には、この二点に対してケア出来るものとして交渉すべきだと思います。例えば、ロシア領土となる地域のウクライナ国民は、そのまま住み続けるか、ウクライナ領土に移住することを選択する権利を保障する。もし、今後のことを考えますと、ウクライナ領土に住む国民でも、ロシアを支持するのであれば、ロシア領土への移住を保障することも必要かもしれません。二点目につきましては、米国とEU諸国が今後、どう介在するかがポイントだと思います。ロシアは今回の侵略の大義名分として、ロシアを支持するウクライナ人の保護を訴えていましたので、第一点での施策で、その問題は無くなることを合意し、新たに侵略をしないことをロシアに約束させることが必要だと思います。そして、米国、EU諸国がこの合意に対しどう重しになるかです。

 もちろん、もし、停戦に至ったとしても、ロシアが武力で侵略して、領土を奪ったことの事実は変えられません。今後の世界の安全保障の問題として、このようなことが出来なくするような、新たな世界的な仕組みが必要になるでしょう。しかし、国連が今のままでは、それは難しいのです。軍事侵略を企てる可能性のあるロシア、中国が拒否権を持つ常任理事国であるからです。米国もまた、ガザ地区の紛争で、即時停戦という決議に対し拒否権を行使しました。

 これらのことを考えますと、大国が拒否権を持つことは廃止しなければならないと思います。この機会に、是非、国連の大改革をすべきだと思います。