政府は景気対策の一環として、国民の預貯金を投資に回すように呼び掛けています。これには二つの問題が隠れています。
ひとつは、低賃金や低年金で暮らしを支えることができない国民に対して、自助努力で、自分の資産を増やしなさいというメッセージが見え隠れしています。本来は、貧困層、一般層の所得を増やすことや、年金改革で年金生活者の年金を増やすことに対策を打たなければならないはずが、その本質的な政府の責務を横に置いて、国民ひとりひとりで努力しなさい、政府はそれに対し支援すると言う立場に立って、主客転倒のような話となっているのです。国民の所得を増やしたり、年金を増やすことは非常に難しい問題であるとは思いますが、それを少しづつでも改善することが政府が最も力を発揮しなければならない課題なのに、知恵が無いことを隠すことに躍起になっているようなことでは、現政権も早く退陣した方がいいのではないのでしょうか。難しい問題であればあるほど、既定路線や、既得権益を破壊しないといけないのです。私の主張していますように、富の再配分をやれば、経済成長を待たずに実現できると思うのですが。
もう一点は、投資を推し進める中で、投機を間接的に助長しないかという点です。金融庁などは、金融リテラシー教育を学校教育の中で実施するように進めていますが、まだまだ国民全体を見ても、金融リテラシーが低いのが現実です。その為に、詐欺にあったり、詐欺に加担したり、投機話に巻き込まれたりして悲惨な目に合う若者が多くなっているのが問題です。投資は、企業活動を支援し、それにより得られた資金で、企業が事業を発展させ、その見返りとして、出資者に配当、保有株の価値増で利益をもたらすことを狙いにする行為で、経済の発展に役に立っています。一方、投機は短期間の株価の変動を利用して、差益を狙うというもので、非常にギャンブル的な要素の高いものです。確かに、一部は、株価の変動を色々な手法で予測し、様々なテクニックで差益を得ることで大きな金を得ている人がいるのは事実です。但し、この行為は、本来の投資の意味は薄れて、単なるマネーゲームとなっている点、非生産的なものです。また、お金を稼ぐという意味では、うまくやれば非常に簡単な方法だと言えますが、一方、リスクが大きく、若者が単純に手を出して失敗してしまうという危険性もあります。例え失敗しないケースでも、優秀な若者が、マネーゲームに陥り、その能力で社会へ貢献できるという潜在的ポテンシャルを発揮できなくなるというデメリットもあります。本来、我々の生活の為には、衣食住や生きがいを満たす為の産物を生み出さないといけませんが、多くの優秀な人材がマネーゲームに走ってしまうと金があっても物が不足するということに成りかねません。自分だけ金を得て満足していては、結局、世界全体の貧困を招き、ひいては戦争などという悲惨な結末が待っているということを知って欲しいです。