尼崎市で全市民の個人情報の入ったUSBメモリーを業者が持ち出し、紛失した事件についての市の会見を見ました。市民に対するお詫びは表明するも、責任は業務委託した外部業者にあると明言して、自分達には責任は無いと言いたがっているとしか思えない受け応えに、毎度の事ながら、政治家と同様、役人も常に責任をとらせられないように振る舞うのものだと感心しました。本件、USBメモリーを紛失した当事者の行動も考えられないほど酷いものだとは思いますが、人間というものはミスをする生き物であるということを前提にしたリスクマネージメントの欠如が一番の問題であると思います。特に、全市民の個人情報という重要なデータが簡単にUSBメモリーなどと言うものに移行出来、持ち出すことが出来るということ自体、いつかは流出につながるのではないかと、賢明な監督者であれば認識すべきところを、平然と委託業者と秘密保持契約を交わしているから大丈夫だと信ずる呑気さに呆れてしまいます。今回は一部の人間の杜撰な行動に起因しているかもしれませんが、このような管理状況であれば、悪意ある人間であれば、簡単にデータを奪い、悪用されてもおかしくありません。今回の事件で、我々の個人情報が杜撰な管理下に置かれているということがはっきりしました。もちろん、すべての自治体が尼崎市と同じとは言えませんが、給付金の誤振込があちこちで起こっていることを考えますと、多かれ少なかれ、同様の危険性をはらんでいると考えて間違いないでしょう。
組織というものは、仕事が細分化されていますので、実務を担当している人達がどんな意識で仕事をしているのかが重要です。特に、管理する立場の人間は仕事の目的をしっかり把握し、併せて、その仕事を遂行する上でのリスクについても把握していないといけません。しかし、言われた仕事を機械的にこなすようになると、一番大事な、目的とリスクの認識が欠如してしまいます。本来、役人であれば、市民の為にどう仕事をするのかと言う観点を常に頭のどこかに持ち続けているのが理想です。反対に首長や議員が決めたことを唯々諾々と実行する役人が多いのではないでしょうか。自身も、市民の為に仕事をしているという当事者意識があれば、自分の行動にどんな危険が潜んでいるということを強く意識し、その危険性を排除するような手段を具現化しながら仕事を進める筈です。そうでは無いから、問題が起きてから、右往左往して、どうしたら言い訳できるかとか、他人の責任に出来るかなどと慌ててしまうのです。
例えば、誤振込にしても、もし、自分のお金を振り込むのだとしたら、あのような初歩的なミスをするでしょうか。役人の方達は莫大なお金をそれも市民からの預かりものだと認識していないから、自分の行動がどんなことをもたらすのかなど考えたことも無いのでしょう。
個人データにしても、それが紛失して悪用されたらどれだけの影響があるのか考えていたのでしょうか。
作業をこなして給料を貰っていると言うのではなく、市民の生活向上、安心・安全の為に仕事をしているという当事者意識を是非忘れないでください。役目の軽重と関わりなく(もちろん、上に立つ立場の人の方が責任は重いのですが)役人の一人一人がその認識を持っていれば、例え、誰かがミスをしても、組織として今回のような不祥事は防げたと思います。