前回、日本のアニメ、漫画、ゲームなどに関わる技術が世界的に優れていると述べました。しかし、それらの技術をビジネスに活かすことが不得手であることも示唆しました。 実は、そのような構図は日本のその他の分野にもよく見受けられると思います。精密工作などの加工技術を筆頭にモノづくりに関する色々な技術全般において、非常に高度で、外国には見られないような職人技が存在していますが、残念ながら結果的にはそのような技術や技術者、企業に見合うようなビジネスの成功につながってはいません。
日本という国は、ホワイトカラーと呼ばれる管理的、事務的な仕事は弱く、またゼロから新規のビジネス形体を創出することも弱いように思います。例えば、日本の電機産業、電子産業はかつては世界をリードしていましたが、世界的競争を想定した戦略を持たずに韓国、台湾などに追い抜かれて行きました。きちんと特許的防衛、人材流出防止が出来ていれば、そして、中長期的な開発に惜しまず投資できていれば、戦略的な大型設備投資が他国に先行して出来ていれば、その地位を守ることは出来ていたと思います。これらを判断する、企画部門、経営者の事なかれ主義の為せるわざとして、日本は凋落して行ったのだと考えられます。本来、政府や官僚はそのような日本企業の弱点を補うような政策を練って実行していかなければいけないと思いますが、前例主義や誰もリスク、責任をとりたがらないお役所的体質が蔓延していて、的確な手を打てずに、日本の衰退を傍観することになってしまったのでした。今までも何度か述べていますように、日本の政治家、経営者の多くが、自らの富、地位、権利を維持することには努める、自己保身型の人が多く、国民全体の為に何を為すべきかという観点が希薄であるので、このような結果を招いていたと思います。
地べたに立って日本を支えている多くの技術者、職人の競争力ある技を活かしきれていないことが、日本経済衰退の原因であるのです。だから、今、このことを充分反省して、アニメなどのアミューズメント技術が二の舞を演じないように、国を挙げて、戦略的に支援、展開していくことを願っているのです。