プーチン大統領の目論見がことごとく外れて来た現実に対して、彼はどのような打開策をめぐらして来るのでしょうか。ロシア軍の現状から考えて、このまま戦争を維持すれば、いずれ敗戦が明らかになってしまいます。それを避ける為にも、少しでも早く終戦にしなければならない訳ですが、この状態で停戦交渉に入ると、目ぼしい戦果を得られなくなってしまいます。そうなれば、プーチン大統領が国民の支持を失うのは間違いありません。
そこで、苦肉の策として考えられたシナリオは、「現在の支配地域であるドンバス地方でのロシアへの編入を問う住民投票を実施し、結果を作為的に導くようにして、ロシア編入が住民の意思だと言う既成事実を作ってしまい、ロシア議会でこれを承認して、この地域はロシアの国土だと宣言する。そうなれば、もしウクライナがこの地域への攻撃を実行するならば、ロシア国土を攻撃されたと言うことで、核兵器使用の大義名分を作る。」と言うことのように思います。本当に核攻撃を実行するか、交渉の切り札として使用するかは分かりませんが、もうロシアが優勢になる為には、核兵器に頼るしかないと言う、本当に悲劇的なシナリオです。
誰が見ても、最後の悪あがきにしか見えないような最悪のシナリオですが、プーチン大統領がやるとなれば、今のロシア政府はそれに従うしかないのです。
侵略の決定から今まで、プーチン大統領の考え方ひとつで進んできたと思います。様々な角度からプーチン大統領の考え方に対抗するような意見は多分無かったのではないでしょうか。プーチン大統領もそのような意見を出させないように圧力をかけて来たとも言えますが。その為、プーチン大統領は自分の考え方に固執し、また、その間違いを決して認めようとしないという事で、このような傍から見て、馬鹿げたシナリオがまかり通ってしまうのではないのでしょうか。
独裁者は、一人で考えると、独善に陥りやすいですし、周りからどう見られるのかと言う視点が欠如してしまい、思い通り進まない場合、無謀なことをやりがちです。一人の人間が独裁的にすべてを仕切ることによって起こる大きな欠落なのです。人間はどんな優秀な人であろうが、ミスは避けられません。だから、多くの人間で構成された組織を作るのです。そして、組織の総合力を最大限に高め、ミスを出さないように、もし誰かがミスしても的確なカバー策が出されるのが組織としての強みであり、それが人間の限界を破る知恵なのです。ロシアは表面上は組織の形をとっていますが、実質、決めているのはプーチン大統領ひとりなのです。このような独裁政権は、本当に恐ろしいのです。
この事実をプーチン大統領に突きつけることが出来るのはもう国民の大勢の意見しかないのです。