ロシアのウクライナ侵攻や円安などの影響で、輸入品の価格が上がって、物価の高騰が家計を直撃しています。特にエネルギー価格の高騰に加え、日本は、食料自給率が低く、円安の効果もあって、輸入品の価格が大幅に値上がりしています。
江戸時代にほぼ100%であった食品自給率は、貿易を解放してから、どんどん低くなっています。目先のコスト低減に走って、安い海外製品を輸入して、原材料価格を抑え、食料品の価格を下げて来たツケが出て来たのです。それでは、今回のような事態を想定出来なかったのでしょうか。多分、リスクマネージメントと言う概念が、政策にもっと取り入れられていたならば、ここまでの事態にはなっていなかったのでは無いでしょうか。安価な海外品があると、それに切り替えたくなるのが、一般の傾向であります。私企業であれば、目の前の価格競争でなりふり構わずに、行動せざるを得ないのは理解できますが、すべて、それを許すと、国内の農業、畜産業が壊滅していくのは必定です。そこで、本来であれば、政府がそのような民間の動きを制御するべく、国内産への支援などの政策を実施し、国内産業の維持、保護に努めなくてはなりません。それが今回のような事態に備えるリスクマネージメントなのです。足元の儲けを重要視するのであれば、世界中を探して、安価品に切り替えることが重要で、政府が何の手も打たなければ、雪崩を打って国内産業は崩れて行くでしょう。長期スパンでものを考えれば、今回のような輸入品のリスクはすぐに想定できる筈です。そのような事は、政府、自治体でしか出来ないことなのです。そして、今回のような事態が起こったときに、リスクヘッジ策を実行するのです。残念ながら、そのような中長期的な視点で、リスクマネージメントを常に考えて行くことが政治の役目なのですが、出来ているとは言い難いです。
同じような例を示します。最近、学校の教師の質が落ちたとか、足りないとか問題になっています。この発端となるのは、小泉政権時代、当時の文科省が、足元の財政改善の為に、教員の国の負担を二分の一から三分の一に減らし、給与額や教員の配置を各自治体が決められるようにしました。すると、自治体は、教員数を減らせられるような配置や、非正規雇用の教員を多く採用することにしたのです。教育というものを、かかる費用などを中心に考えますと、このような策を打ったりするものです。教育は本来、国や人を支える人材を育てる為の先行投資です。その為に、教師の質、量が重要であります。それを形だけ整えて、自治体に責任をなすりつけ、その結果、不安定な非正規雇用が増えたり、員数が足りなくなってしまったのです。そのようなことで、教師が本来の教育に打ち込んでいられるでしょうか。このような例も、目先の利益だけを考えた策の大いなる弊害なのです。
民間は経営を維持する為に、目先の利益を優先せざるを得ないことはあります。そうだからと言って、政府や自治体が、それに追随していては、中長期的なリスクに対応することは出来ません。このようなことになって来たのは、政治家や官僚幹部もが、目先の利益を追い求めてしまうからです。逆に、不透明な未来をコントロールする高度な知恵を発揮出来る人材が少なくなって来たと言えるのではないでしょうか。これも表面的な綺麗ごとばかり唱えている詰込み教育の結果なのではないでしょうか。