岸田総理が今後の防衛費の大幅増額に対して、その財源の一部を増税で賄う具体案の検討を命じました。私は、これまでにも、国際問題は軍事力より外交で対応するのが基本であると述べて来ました。しかし、現在、日本を取り巻くロシア、中国、北朝鮮と言う軍事国家とは話せば何とかなるというステージからより危険な段階に入ってしまったことから、止むを得ず防衛力を強化せざるを得ないことは理解できます。もちろん、これまで政府がそれらの国々との交渉を上手く進めて来たと言えば、そうではないかもしれませんので、ここに至ったのは日本の外交戦略の不味さにもあったとも言えると思います。しかし、タラネバの話をしてもどうしようも無いので、現実的には防衛力を強化することである程度対応する前提で話を進めます。
 
 昨今の物価高騰で一般庶民の生活は厳しい状況が続いています。岸田総理はそういう状況なので、直接税である所得税を増やすことはしないで、他の方法を探すように支持しました。一見正しそうに聞こえますが、例えば間接税である消費税を増やしたとしても国民の生活を悪化させるのは同じことです。さらに、所得税は所得額の大きさで税率を変えることが出来ますが、消費税は貧富に関係無く一律に増税されるものですので、貧困層、標準層への悪影響が大きく出る性質のものです。

 人口割合の多くを占めている通常生活に苦しむ層への影響を避けなくてはなりませんので、こういう時こそ富裕層に負担してもらうことがいいと思います。富裕層も自分で苦労して稼いだ金なのだから、さらに税金で持って行かれることに大きな抵抗はあると思いますが、国が危機的な状況であれば、そんな利己的な感情は抑えるべきだと思います。それより、食うにも困っている人々や、かつかつの生活をしている人々に負担増を強いるより、富裕層が豊かな生活にあてる金の一部を社会に還元するのがいいと思うのです。

 もちろん、そのような策を実行するにあたり、まずこのような事態に至った責任が重い政治家が、高い報酬と潤沢な経費の中の一部を返上するのが手始めだと思います。国民に痛みをお願いするのなら、自ら痛みを背負うのが筋だと思いますし、そうであれば国民の納得感も得られ、多くの国民も協力的になると思います。

 岸田総理は、自民党総裁選に出馬されたときの掲げる政策の中で、貧富の格差是正も念頭にした成長と分配の好循環による新たな日本型資本主義の構築を提唱されました。しかし、総理に就任後は、分配するには成長が必要だと分配の具体化を先送りにされてしまいました。もともと株式投資への税率見直しなどで、総所得がある規模を超えると結果的に税負担額が下がっている現状の是正を唱えられていたと思いますが、これは成長が無くともやれる施策であったにも関わらず、支援者に多い富裕層の声で腰砕けになっていました。

 今回の増税は、格差是正の為の新たな分配を実行できるチャンスなのです。是非、初心に返っていただき、国民全体の支持を取り戻す為にも、汚名返上していただきたいと強く思います。