NHKの大河ドラマ「鎌倉殿の13人」が最終回を迎えました。源頼朝が平家打倒に立ち上がったときから、承久の乱で幕府側が後鳥羽上皇側に勝利し、実質的に武家政権が日本を統治するまでの物語でした。頼朝が義経などの活躍により平家を倒して、鎌倉に幕府を立ち上げるまではドラマや映画で度々演じられて来ましたが、北条義時を主役にしたものは珍しく、興味を持って視聴を続けていました。前半は頼朝が幕府を立ち上げた後も、政権を盤石とする為に、次々に敵対するかもしれない豪族らを暗殺、粛清すると言ったドロドロした話でしたが、頼朝没後も、北条義時が頼朝を見習うように、次々と暗殺、粛清を繰り返すと言った非常に怖い話でした。あまりに暗い話を、三谷幸喜と言う希代の喜劇作家が脚本を担当し、ユーモアの隠し味を上手く忍ばせて、見応えのある作品となりました。
北条義時の思いは、阪東武士を平家、天皇家などの統治から自立させることでした。その為に頼朝と言う看板を利用し、鎌倉に武士政権を築くことが手始めでしたが、事はそんなに単純では無く、頼朝の子である将軍、幕府の豪族達も、武士政権を完全に自立させたいという目的は同じでも、そこへのプロセス、やり方、ゴールの具体的な地点など、それぞれの異なった考えがあり、その相違により血みどろの権力闘争となったのでした。人間が多数介在すると、似たような目標を持ってはいても、諍い(いさかい)が絶えないのは世の常とは言え、その当時には、考え方の違うものは暴力で消してしまうと言うのが一般的だったので、このような悲劇が繰り返されたのです。主人公の義時は、己と違う考えを持った者を粛々と抹殺して行ったのですが、最後はその報いで(最終回のタイトルは「報いの時」でした)、己自身が妻や親友や姉の不連続な動きによって殺されるという悲惨なエンディングでした。
人間は何を求めて生きて行くのか考えさせられる物語です。権力闘争や殺し合いの中には、決して平穏で幸せな最後は無いのだと思います。異なった意見を持つ人々はどんな時代でも存在するのですが、それを法というルールの下、話し合いで解決するのが長い争いの暗黒時代を経験した人類が導き出した答なのだと思います。この何千年に多くの血を流して不条理に死んでいった多くの人々のことを決して忘れてはいけません。それでも、今でもウクライナでの戦争などが起こると言うことは、人類はどれだけ歴史から学んだのかと不思議でなりません。壮大な歴史を学んでいけば、戦争のような殺し合いで得られるものがどんなものなのか、簡単に想像できると思うのですが。