新型コロナウィルスが拡がり始めて、早三年が経過しました。当初は、得体の知れない新型ウィルスに怯え慄き、強い規制と対策が続きました。日本が島国であったことで、海外からの入管規制を徹底的にやれば、ある程度防げるのではと希望的観測もありましたが、そう言う反面、その防波堤には多くの抜け穴が存在するような形での方策しか、政府は取れなくて、多くの感染者が大波の如く増えて行きました。国内での感染源が飲食店であるとされて、飲食業や観光業の営業停止が進められました。それらの休業に対する補償金も釈然としないルールで、事業主や雇用者の生活を支えられないケースが多く、逆に、休業した方が実入りが増えると言ったまるで火事太りのようなアンバランスのケースも見られました。いずれも、政府、自治体と言う行政の危機管理能力の低さ、実行力の低さが際立っていました。そのような状態が続いていく内に、国民全体に、新型コロナウィルスの実体が少しづつ輪郭を理解できるようになって来てはいますが、あらたな変異株が出現しては、あらたなリスクに怯える日々が続きました。ウィルスの戦略は、宿主、つまり人間に寄生して、自身のコピーを増やし繁栄していくことなので、過去の感染症がたどったように、感染力が高く、病毒性が低い種が残って来ました。オミクロン株という変異種群が主体となって来て、併せて、休業補償の財源も乏しくなり、経済と言うか、人々の生活をこれ以上停滞されられないこともあって、政府は大幅な規制緩和策へと舵を切りました。
そして、今現在の第八波という流行期に入っています。基本的な対策であるマスク、手洗い、三密を避けると言った個人に依存した対策は習慣化されて来ましたが、それ以上の規制はほとんど無くなって、街には多くの人々が出て、海外からの観光客で以前に近い賑わいの出た地域も現れています。しかし、ロシアのウクライナ侵略に端を発したエネルギー問題や、それと円安との相乗効果での物価高で、行動制限が無くなったと言うのに、庶民の生活はまだまだ暗いトンネルを抜け出せずにいます。
ここ最近の感染者数は増加の一途を辿り、特に気になりますのは、かつての強毒性株の流行時より高いレベルで死亡者数が増加していることです。制限緩和してから新規感染者数の全数把握が為されなくなり正確な死亡率がわからないので、判断が難しいと思いますが、なんとなく弱毒性と言われている割りに死亡率が高そうな感じがします。政府、専門家はこのような状況でも、新型コロナウィルスへの明確な態度を示そうとはしていません。何となくなし崩し的に、過去のものとして葬り去ろうとしているように感じるのは私だけでしょうか。死亡者のほとんどが高齢者であることで、この事態を重要視していないのでしょうか。
ある程度効果がある治療薬が普及していないことが、新型コロナウィルスをインフルエンザ等と同列に扱えないキイポイントだと思うのです。医薬品メーカーは健康な人も含め人口全体を対象と出来るワクチンビジネスの旨味を捨てたくないので、治療薬の開発に身が入っていないと思うのは、それほどうがった見方でしょうか。いい加減、数か月に一度のワクチン接種から解放されたいと多くの人が願っているのではないでしょうか。もちろん、ワクチンを接種出来ない体質の人にとっては、治療薬だけが頼りなのです。
岸田総理は事あるごとに説明責任を果たす、果たせと言われていますが、その他の政策も含め、国民に分かり易く、政府としてどう考えるからこのような政策をとると言った、最も重要な説明がかなり不十分だと思うのです。総理とて人間ですから間違いは無いとは言い切れません、ましてや複雑な状況の中、難しい判断をするのですから、百パーセント完全な答えはある筈はありません。だからこそ、現状をどのように把握し、今後、どのようなリスクがあると考え、それに対してどのような方策が考えられ、こういう点を重視し、この方策を選択したと言うような説明をすべきだと思います。決定へのプロセスが明確になると、もし結果として失敗しても、今後の改善材料が明確になりますし、国民としても、政府の考え方の説明を聞いた以上、想定されるリスクを承知の上、政府の方針、政策に従うことが出来るのだと思います。
政府、官僚は、国民をある意味馬鹿だと思っているのでしょう。だから、正確に真実を説明したら、そのリスクに不平不満をもらしたり、混乱したりするから、敢えてきちんと説明しない方が、スムーズに事が運ぶのだと思っているのでしょう。そのように国民を見下している内は、本当の国家としての団結は生まれないでしょう。日本が凋落していると言われて久しいですが、政府が国民を信じて事を為すことだけが、この危機を救えるのだと思います。