最近、日本の凋落を取り上げる話題が多くなっています。韓国メディアも、もうすぐ国民一人当たりのGDP額で、まもなく日本を抜くということを誇らしげに語っています。また、物価の違いによる実質的な豊かさを示すと言われている購買力平価換算値では、すでに韓国は日本を抜いています。この値では、総GDP額で1位の米国は7位、2位の中国は77位となっています。上位は、ルクセンブルグ、シンガポール、アイルランド、カタール、スイスと人口が少ない国々です。これらの国では、近隣諸国からの通勤労働者が多く、実態としての労働者数当たりのGDPとは乖離していると思われます。
さて、このような経済指標で、その国の豊かさの実体を現わしているのでしょうか。前述した一人当たりの購買力平価換算のGDPの上位国は、安価な労働力を他国に依存している訳ですし、総GDPの上位、米国、中国も、富裕層は極端に富んでいますが、多くの低所得者を抱えています。平均値というのは、実態を正確には示す訳ではありません。
日本はそれらの国々に比べれば、まだある程度の生活が出来る層の割合は比較的多いと思われます。しかし、年々、格差が拡がっていますので、このまま放置していますと、いずれは一部の超富裕層と大部分の貧困層というような姿になってしまうことでしょう。特に問題なのは、昔は一部の社会的競争に敗れた中高年層が定常的な職を失いホームレスになっていたケースが多かったのですが、今は、継続的な職を得られない若者が増えて来ている点です。岸田総理は当初は所得倍増とか、最近では給与を物価増加より多く上げるとか言われて来ましたが、そのような政策で救われるのは、今でもある程度の生活が出来ている大企業の従業員だと思います。それも必要ではあると思いますが、本当に先に手を差し伸べるべきは、中小企業の経営者、従業員や継続的に働けない非正規社員、日雇い労働者なのです。彼らは真面目に努力してこなかったからだと片付けるのは間違いだと思います。今の教育では、勉強が得意で無い人が、勉強以外の適性を見出し、それを活かせる職業に就ける社会システムが欠如していると言わざるを得ません。つまり、根本的な解決策は、教育、雇用制度の大幅な改革が無ければ成し遂げる事はできません。その改革には時間がかかる訳ですので、その前の緊急対策は富裕層から貧困層への富の移転だと思います。これらにより、多くの人が安心して働ける環境や生活基盤を確保できるようになり、それにより、多くの個人のヤル気が上がり、一人一人の生産性が上がり、一人当たりのGDP、国全体のGDPも増えていくのです。