関東地方で、強盗事件が多発しています。これらの実行犯はインターネットの闇サイトから高額バイトに募集した若者達だそうです。彼らは借金の返済などの為に、日当100万円のような高額に目が狂い、このような犯罪に加担することになったようです。遊興三昧の暮らしで借金を作ったり、安易に金を稼ごうとしたりと彼ら自身に問題があるのは間違いありませんが、彼らを糾弾するだけでは問題が解決する訳ではありません。根本的には、弱者に救いの手を差し伸べるような社会にならなければと思います。

 今回は、このような事件の中に見えて来る現代社会の間違った方向性について述べたいと思います。

 今回の事件で透けて見えて来たことがあります。表面に出て来ました実行犯以外に、実行犯は検挙されるリスクがかなり高いのに比べ安全な所から指示を出す指示役、そして、指示役に資金や情報を提供し、稼ぎの大部分を搾取し、このような犯罪を企画する黒幕で構成されている構造が、(権力者や富裕層)、(政治家や高級官僚)、(一般民衆や貧困層)三者の関係、さらに資本家(経営者)と社員と非正規社員の三者の関係によく似ていることです。

 実はこのような関係は歴史的には、近代以前の封建社会と良く似ています。土地を所有する領主とその土地の管理を任される役人、そしてその土地を借りて農業を営む農民です。実際、農民が栽培し収穫した作物を役人が召し上げ領主に献上し、その一部を俸給として受け取る形でした。農民は一番苦労して、多くの労働を費やしたのに、彼らの手の中に残るものは僅かでした。近代になって、世界は資本主義が主流になって来ました。しかし、結局は資本家が一般民衆の労働から作られた有用物やサービスを換金し、多くを搾取して、一部を従業員、社員である民衆に給料として還元するのですが、例えば日本においては、二十世紀後半から非正規社員を増加させて、ビジネスの好不況に対応して雇用したり、解雇したりを容易く出来るようにして、資本家や経営者のリスクヘッジに利用して来ました。

 上に立つものからすれば、この構造は確かに短期的には非常に効率的なものです。しかし、危ない橋を渡る実行犯も、厳しい労働に晒される農民も、安定性の無い非正規社員から見れば、不合理なものです。政治が弱者に目を向けるのであれば、このような構造を壊そうと考えないといけないのです。

 搾取する側から見ても、使い捨ての実行犯や非正規社員は一見便利ですが、実は大きな問題を孕(はら)んでいるのです。つまり、長期的に見れば、組織の一部の機能が弱体化していくのです。非正規社員が担っている機能は、人がころころ入れ替わっても機能すると考えられていますが、実際の現場で起こっていることは、人が替わると、仕事を引き継いだり、覚えたりということにかなり労力がかかっています。また、いくら重要な業務ではないと言っても、会社に必要な機能なのですから、習熟度が上がり、スキルが上がる程、生産性は高まるのですし、また結果的に総合力としての人材レベルは上がるものなのです。

 つまり、雇う側、雇われる側の両面から、使い捨ての雇用関係はマイナスなのです。

 ちなみに、決して反社会的組織の為を意図している訳ではないのですが、このような理屈は、反社の世界でも通用するのです。現在のように実行役を闇バイトに頼っていては、実行犯のレベルアップを図ることは難しく、しいては将来を担う幹部の人材不足に陥るかもしれません。下積みで、実行犯として経験を積みますと実行犯としてのレベルは上がり、また出世して指示役や企画役に昇進すれば、現場を良く理解した幹部を養成できるのです。このようなサイクルがあれば、下積みの苦労にも耐えるモチベーションが上がり、人は育つのです。すいません、反社を応援したいと言っている訳ではなく、どのような組織、構図でも、短期的なメリットに目がくらみ、人を使い捨てにしては、長い目で見れば大きな損失となると言うことを言いたかったのです。

投稿者

弱虫語り部

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