ある地方議員の広報誌を拝見しました。この議員は以前からワクチンに反対の立場で市民に訴えていました。確かにワクチン接種による被害はある割合で存在していることは事実だと思いますし、その内容に虚偽のデータを使用している訳ではないと思いますが、要は伝え方に問題があると思います。つまり、都合の良いデータを使い、さもワクチンの効果が無いように思わせていることや、コロナワクチンに罹患した患者の被害、例えば、高齢者や重篤な持病を抱えているひとに対する重症化から死亡に至らしめる現実や感染した若年層が多く後遺症に悩まされ、学業や仕事に深刻な被害を受けている事実などには全く触れずにことさらワクチンの副作用を強調している点です。
政治に関わる議員の今回のような新型コロナウィルス流行における役割は、国民、市民に正しい(偏りの無い客観的な)情報を伝え、そのことからどのようなことをすればいいのかと言う道標を示すことです。また、新型コロナウィルスのようにまだ不明な点の多い場合には、何が分かっていないかを示した上で、選択肢を与え、選択したケースのメリット、デメリットを示す必要があります。つまり、私が政治家であったなら、次のような伝え方をしたいと思います。ワクチンの効果は完全ではないし、ある割合でこうこうこのような副反応が出るリスクが存在し、極稀れには重篤な被害がある可能性があることをきちんと説明します。一方、新型コロナウィルスに感染すれば、特に高齢者や重い基礎疾患のある人は重症化する恐れがあり、場合によっては死亡するリスクがあること、また若年層は重症化のリスクは低いのですが、重篤な後遺症に悩まされる可能性もある程度の頻度で起こることを隠さずに伝えると思います。各個々人は、このような情報を理解した上で、自身の置かれている状況なども考慮し、ワクチンを接種するか否かを選択する権利があります。感染爆発による社会的な影響を考えますと、公共に利することを希望する政府、自治体としては、国民、市民の適切な判断により、ご理解いただけるのであれば、ワクチン接種を推奨しますとお願いするでしょう。
この議員は、この地域での死亡者、重症者の八割以上が2回以上ワクチンを接種していたことから、ワクチンの効果は無いことは明白だとしています。しかし、現在のワクチンの能力では、感染、重症化予防に効く抗体値が長くは維持されない以上、ワクチン接種後どのタイミングで感染したかによって、効果が発揮されないことは当然のことです。ましてや、数々の変異株が存在するのですから、それらとの関係も抜きには語れません。少なくともワクチンの効果を断言したいのであれば、もっと詳細にケーススタディをした上で解析しないといけないと思います。
今回のケースのように、政治家の多くは、自分の考えに有利なように情報の一部だけを利用し論理を構築するひとが多いと思います。これはどこかの国で行われている情報操作と同様なものです。自分の考え方の正当性を示したいのなら、関連する情報を都合よく取捨選択する事なく、科学論文などのように、客観的に世界にある情報を徹底的に調査し、網羅した上で、結論を導き出すべきだと思います。