私の最近の関心事のひとつは、人間は人工的にどこまで人間を再現できるのかということです。生物学、脳科学、ロボット工学の進展を垣間見て、自分なりに素人なりに考えています。人間をもっと深く理解する為にも思いを巡らせてみたいと思います。
基本的な人間の機能の発現は、大まかに言いますと、脳神経系とエネルギー系、運動系が組み合わさって行われています。脳神経系は、コンピューターで言いますと、センサーのように情報や命令を取り入れる知覚機能、サーバーのように情報を蓄積する機能、CPUのように得られた情報や蓄積しているデータを処理する制御機能で構成されると思います。データ処理に必要なプロトコールはプログラムとして制御系に組み込まれます。実際は、知覚は五感である視覚、触覚、臭覚、聴覚、味覚として、各器官が情報を取り込み、それを神経系により脳に伝達されます。得られた情報は脳で処理され、一部は記憶として取り込まれたり、即座に肉体系に指示を出したりします。人工的に再現するとして一番難しいのは制御系です。現在はAI技術がこれに相当しますが、この技術は膨大な情報から、類似した状況をピックアップして、そこからどう判断し、どう行動するかを決めるのですが、これだけでは、人間の脳には及びません。人間はAIのように演繹的、帰納的に考えることも多いと思いますが、閃きと言われる創造的な思考もします。感情的な反応もどのように人工知能に付加させたらいいのでしょうか。人間は自分に害を与えそうなものは避けたり、嫌いになったりします。好き嫌いの感情をこのようなプログラムで判定するのでしょうか。難しいのは趣味趣向です。直接、生きていく活動とは関係ない部分での好き嫌いをどうして生み出せばいいのでしょうか。
さらにもっと難しそうなのは、自己をどのように認識するのかということです。人間型ロボットを作成するとして、センサーから得られた電気信号をAIを導入したコンピューターで処理し、記憶として蓄積する情報を記憶回路に収納し、必要に応じて、言語を発するか機械的に手足等を動かすかで、ロボットを人間的に活動させられると思います。このとき、自己の認識がなければ自分自身に害を与えるような行動も為してしまうかもしれません。実は、自己認識の例は、免疫活動にも見られます。ミクロな世界で、侵入する微生物、ウィルス、異物を外敵と判断して攻撃、排除していきますが、人間でも、この機能に誤作動が起こります。アレルギー、花粉症やアトピーと言ったものがそれですので、免疫系での自己認識機能もミスしやすいほど微妙なものなのでしょう。免疫系での自他の区別のメカニズムを模することで考えたらよいのでしょうか。この辺りは私がまだクリアになっていない部分です。
今後どれくらいの時間がかかるか分かりませんが、人の代替が出来るロボットはある程度出て来ると思います。この過程を考えていますと、次に生物、人間の生と死についても朧気ながら見えて来るものがありそうです。