韓国の尹大統領が来日し、岸田総理と首脳会談を実施します。
ここ何年にも渡り、日本叩きを政治の道具として来た韓国の歴代大統領が続いた為に、日韓関係はかなり冷え込んでいました。元々中国の文化などが朝鮮半島を経由して日本に渡来し、それらをベースに日本文化が発展して来た経緯があり、いろいろな面で関係の深い隣国同士でしたが、豊臣秀吉の朝鮮侵略や明治から昭和にかけての日韓併合の過去により、日本に対する韓国人の嫌悪感が醸成され、さらに韓国政府などがこの国民感情を政治利用して来たことで、このような関係に陥っていたのです。戦前戦中派が植民地支配で被った経験、さらにそれらの歴史教育で偏った日本感が拡がっていったのですが、一方、経済的には電子産業などを中心に深い関係が築かれていったり、若者の中には日本の文化などに興味を抱く人達も増えて来て、その関係も表裏が存在しているのも事実でした。
尹大統領はそのような不幸な関係を断ち、隣国そして民主主義国同士として、いろいろな面で協力することが重要であるとの判断から、積極的に日本との融和政策を進めて、今回の首脳会談につながった訳です。慰安婦や徴用工問題、竹島領土問題を発端として、それに対するお互いの経済制裁や、軍事的な挑発行為など悪循環となっていたのですが、このままですと益々関係が冷え切ってしまう所でした。しかし、尹政権はそのような状態が続くことは両国にとって大きな不利益であると判断するに至ったのでしょう。
徴用工問題では国交正常化に伴い1965年の日韓請求権協定により外交的には解決を見たとされていたのが、2018年の韓国大法院の日本企業への損害賠償を命じた判決が確定し、両国関係の溝が一気に広がったのでした。これについて、日本は先の協定により解決済みとする判断で韓国政府として是正措置をとるように求めていましたが、当時の文政権は三権分立を盾にこの問題への介入を避けていて、原告である徴用工が被告である日本企業の韓国内の資産差し押さえ、売却手続きを進めていました。
このように両国の言い分は真っ向から対立していたのですが、尹政権により政府傘下の財団が賠償を肩代わりする解決策を発表され、日本政府も高く評価するに至ったのでした。
外交の分野でも、当事者国間でお互いの言い分を貫き通せば、解決に至ることは非常に難しく、歴史的には軍事的な解決しか打開策が無い場合もよくありました。もちろん、今回の場合は軍事的解決を選択する可能性は低いと思いますが、このままでは両国関係が冷え込む一方になることは必至でした。両国を取り囲む国際情勢は不安が多く、北朝鮮、中国、ロシアなどとの関係は非常に微妙で、こちらは軍事的な衝突に発展する可能性を否定できない訳ですので、日韓がこの点においても協力することが非常に意味があり、また経済的にも、文化交流にももっと協調する余地があり、それが両国のメリットになることが期待できるのです。
今回の尹政権の英断についてまだ国内の反対を払拭できた訳ではありませんが、私も高く評価しています。以前から述べていますように、国際的な争いは話し合いで解決すべきだと思います。武力解決はお互い多くの人民を不幸に陥れるのは間違いないからです。だからと言って自国の言い分だけを主張しては解決などありません。ある程度お互い妥協しなければならないのです。そういう意味で、尹大統領が身を切った判断をしたのですから、岸田総理もこれに応えて、韓国の元徴用工に対しては、きちんとしたお詫びを表明すべきだと思います。ここで、プライドなど持ち出して、今回の措置が解決済みの問題だから当然のことだと言うようなことを現わしては、元の木阿弥になるかもしれません。お互い妥協し合うと言うのが、お互いの国益を高めることなのです。