ワールドベースボールクラシック(WBC)も一次リーグが終わり、ベスト8が出揃いました。その後、日本は準々決勝にも勝ち抜き、ベスト4に進出しました。
日本のこれまでの戦いの間に、対戦国とのエピソードが伝えられて来ました。特に印象深かったのは、敗者が勝者を称え、勝者も敗者を称えた試合後の談話や選手間の交流です。チェコは今回の予選リーグで初勝利をあげたのですが、彼らは野球を職業とはせず、様々な職業に就く傍らに野球を真剣に取り組んでいるのだそうです。純粋にアマチュア選手として、大谷選手等の世界のトップ選手との交流や大勢の観客の中での試合の経験に深く感激したようです。一次リーグを二位で勝ち抜け、キューバとの準々決勝に臨んだオーストラリアチームも、多くの日本の観客がまるで日本チームにおくるのと同じようにオーストラリアの選手を大声出して応援したことに感動したようです。
私自身もこれらのエピソードに触れますと、これこそスポーツの持つ理想的な国家間の交流なんだと再認識しました。ある国では、一次リーグで敗退した自国チームに厳しい批判を投げかけていたこともありましたが、スポーツというもの、特に今回のような短期決戦では、勝敗は多分にときの運の要素が強く、結果よりも、真剣に取り組んだ内容に賛辞を贈ることが本筋であると思いました。そういう意味で先程のチェコ、オーストラリア、日本などを取り巻くエピソードに盛り込まれた人々の姿勢を称えたいと思います。
選手達は国の代表としての大変なプレッシャーを背負い、しかし、何としても勝とうと全力を尽くす姿の美しさ、そして一旦勝敗が決まった後の敵味方区別無く称え合う姿こそ、感動をもたらしてくれるものですし、見ている人々に自分も頑張って生きなければと気付かしてくれることに大きな意味があるのだと思いました。
スポーツの中にも戦略、戦術、駆け引きもありますが、すべてはルールの下での戦いであります。一方、戦争は実質ほとんどルールの無い殺し合いです。そのような中に、人間性も殺されてしまうのですが、スポーツは戦いではあっても人間性を呼び起こしてくれるのです。つまり、戦った同士でも、友好的な関係にいられるのです。国と国との関係も今回のようなお互いが相手へのリスペクトをベースにして、話し合いをすればきっと妥協点が見つかると思います。そのことが同じ地球に暮らすもの同士、わきまえなければならない共通のルールなのです。自然界から見たら地球には国境などは存在しないのです。気候変動、環境問題、感染症など厄災に対しては国境が守ってくれないのです。世界中の人々は運命共同体として地球というひとつの星に暮らしているのですから。