ワールドベースボールクラシック(WBC)で優勝した日本チームが帰国し会見しました。会見での、どのスタッフ、選手のコメントも非常に興味深く聞かせてもらいました。特に印象深かったのは、記者会見や、各局テレビのニュース番組に出演してインタビユーを受けた栗山監督でした。後日談と言うことで、かなり突っ込んだ話をされていましたが、全体的に人と人のコミュニケーションに関わる話が多く、彼の人間性がよく理解出来たような気がしました。
栗山監督は日本ハム監督時代での選手との関係に厳しさが無いなどと言った批判的な声も聞こえていましたが、今回のWBC監督での代表選手の選び方、チームの雰囲気作り、選手との接し方、試合での采配の仕方などを見ていますと、彼が甘いのだと言う訳では無く、目標として強いチーム作り、選手の成長などを考えた上での、彼のやり方だったのだと理解出来ました。プロの厳しさを前面に出して、プロである以上選手個人のことより(個々の故障や疲労などについてはどの監督も考慮されてはいますが、個人の感情やチームの雰囲気より)、徹底的にチームの勝利の為だけに徹し、結果だけを求める指導者に比べると、物足りないと批判されているのだと思います。しかし、チームの個々人が気持ち良くプレイするようにし、且つ押し付けではない自発的なチームの一体感を醸成して、それが試合の結果につながるようにしたいとの栗山監督の考え方の方が、私としては賛同できるのです。
今回は結果が出たので、栗山監督のやり方を真正面から批判する人はほとんどいないと思いますが、もし、例えば準決勝の九回で村上選手が凡退していたとしたら、また決勝で最終回に大谷選手がトラウト選手にホームランを浴びていたとしたら、どうでしょうか。前者では、不調の村上選手を諦めて、代打を出して送りバントしてワンアウト二塁三塁で、最低でも同点を狙う方がよかったとか、後者では、DHで疲労もあり、準備もままならない大谷選手を無理に出さずに、きちんと準備が出来る他の投手で抑えた方が良かったと言う評論家が多数出ていたでしょう。
村上選手が逆転サヨナラヒットを打つか凡打するか、大谷選手がトラウト選手を打ち取るか打たれるかは本当に紙一重だったと思います。どれだけ考えて作戦を練っても、この結果を絶対と言うレベルで導くことは誰にも出来ません。だから、結果が出てから批判することは簡単ですが、監督自身の考えに従い作戦を立て、選手がそれにどう応えるか(投球が数センチずれたり、バットコントロールが数ミリずれたりしただけで結果は大きく変わるのが野球と言うスポーツです)は、神のみぞ知る世界でありますので、本当は結果が判った段階では批判してはいけないと思うのです。結果を見てから、鬼の首をとったように批判することは誰だって出来るのです。プロの野球関係者であれば、結果が出る前に、自分はこうするのが良いと発言することで自身の考えを表現することが本来の姿だし、監督の采配とは違うそんな考え方があるのかと、我々素人が野球と言うものの見方をいろいろな角度から眺められるような興味につながるのだと思います。多分、栗山監督も決断をしたら、後はどのような結果でも責任をとると腹をくくってられたのだと思います。勝負事とはそのような紙一重の世界だと思います。
野球(スポーツ)の原点は、結果に云々するだけではなく、実際戦っている監督、選手が真剣に取り組む姿、技術を見て、感動するものだと思います。観戦後の飲み屋で、それぞれのファンの感想で監督、選手を酒の肴として、あれこれ論評するくらいに留めているのがいいのかと思いました。