岸田総理は、自身の特徴のひとつをひとの意見をよく聞くことだと言われて久しいですね。子供への10万円給付方法、新型コロナウィルス対策などで、当初案に反対する声が大きくなると素早く方向転換することもありましたが、これも聞く耳を持っているからなのでしょう。これについては、賛否両論あると思います。最初の案よりさらにいい案があれば、素直に改めるというのは悪いことではないと思いますが、朝令暮改というのはそれを実行する段でいろいろな混乱を招くという弊害があります。本来は英知を結集して、リーダーが判断して最善策をとるというのが理想です。しかし、英知を結集できるようなシステムを構築できているか、結集できたとしてもそこから最善策を導き出す判断力を持ったリーダーがいるのかという条件が満たされてはじめてうまく機能するのです。
このような観点から、岸田総理のケースを眺めてみましょう。まず、当初案は、担当官僚が大臣を通じて総理に上申するのが通常の流れのような気がします。と言うことは、担当官僚チームが全体を把握して、必要な様々な情報を入手して、専門家の意見も加味して、案を作成できていればいいのですが、限られた時間でこれをやり遂げられる可能性は高くないと思います。そこで、そのときに気付いていない点を残したまま、上申され、担当大臣、総理も了承して成案化されるのですが、案が発表されると、だれかが問題点を指摘し、それがあちこちから声が上がって来ると、岸田総理は、その内容が妥当であると判断できれば、朝令暮改的に案を変更したりするのではないでしょうか。例えば、10万円支給の場合は、公明党の無条件で支給するという案と収入制限を設けて困っている世帯にだけ支給し、経済にもいい影響をもたらしたいという自民党案の両者の顔を立てようと、割と高い収入制限を設けて一部の高額富裕層を除き大部分の世帯が給付を受け取れるということで公明党の顔を立てた上に、半分はクーポン券で預金に回らなくし、すぐに社会に還元できるということで自民党の顔を立てるという一見妙案で一旦は決着しました。しかし、これを実行する自治体から、クーポンで配れば、大変な手間と経費がかかることが指摘され、また国民の声も税金の無駄遣いとの声が叫ばれるにあたり、岸田総理はこの声を無視できず、前案をひるがえすことになったのです。多くの声を聞き入れて案を改めることは悪いことではありませんが、出来れば、最初からそのような問題点を認識していればよかったと思います。もちろん、労力や経費の点も、官僚達も気付いていたかもしれませんが、彼らにとっては、実行する自治体役人の負担増やそれくらいの費用は問題にならないであろうとの認識だったのでしょう。案を作るものと実行するものに一体感が無い場合は、このようなことになり易いのです。
結論として、現在の官僚組織では、国民の納得の行く案を考えることができないのです。あまりに多額な予算を扱い麻痺し、末端で実行される具体的イメージもなく、政治家に説明することに腐心していては、効果的な策を立案できるとは思えません。また、官僚に頼り切らないとやっていけない政治家も問題なのです。
岸田総理はいくら聞く耳を持っていても、それだけでは限界だと言うことを悟って、政治、官僚システムを大幅に変革する必要があることに早く気付き、着手してもらいたいものです。