テレビのドキュメンタリー番組で国境なき医師団の約50年間の歴史を語っていました。最初、フランスの13人の医師が集まって、紛争地などでの医療支援活動とその地の実態を世界に発信することを目的に、スタートしました。資金援助してくれるスポンサー探しと共に働く医師、看護師を募集することが難航した立ち上がりでしたが、徐々に拡大して来て、今では主にアフリカ、アジア、南米で医療活動を実施していて、医療関係者、サポート要員で数万人の規模になっています。1999年にノーベル平和賞を受賞しています。
赤十字社と違い、医療活動以外に、紛争地の実態を世界に発信することから、紛争当事者などから妨害されたり、迫害されたりすることも多く、これまでにメンバーにも七十数名の犠牲者が出ているそうです。
1990年代に、日本でもスポンサー、支援メンバーの募集を開始した様子が示されていましたが、寄付を募った大企業の総務など窓口担当の冷たい対応に苦労したそうですし、一番印象的だったのは、日本医師会などを通じて募集しても、生活があるからと月10万円程度の収入ではとても参加出来ないと言う医師が多かったことです。
医者になろうと志す人には、大きく分けて二つのタイプがあり、ひとつは、純粋に病気などで困っている人達を助けたいと思うタイプと、もうひとつは、医者の地位と安定した高収入を手に入れたいと願うタイプです。後者には、親が医者で、その資金力と環境から、世襲的に医師を志す人も多く存在していると思います。後者のタイプでは、このような人道支援に参加するなど考えられないことでしょう。前者のタイプでも、苦労して医師となり、せっかくつかんだ地位と富を一時的にも捨てて、ほとんどボランティァ同然の活動、それも命の危険性もあるようなリスクを承知で参加するのは、非常に壁が高いのも理解できます。
それでも、参加される人は、AEタイプの人がほとんどだと思います。WEタイプの人の中にも、気持ちが揺らぐ人もおられると思いますが、中々決断するのは難しいでしょう。もちろん、日本で多くの患者の為に尽くされることも非常に重要なことなので、それを捨ててとは言えないと思います。
世界の紛争地や被災地に行って、医療活動をすると決意する人はきっと誰かがやらなければならないことに誰もが背を向けては、本当に困っている人を救う事が出来ないと考えられた末に、自分が火中の栗を拾わなければ誰が拾うのかと考え、決断されたのでしょう。このような尊い意志を持った人に心底敬意を払いたいと思いますし、そのような人達がいなければ、この世界はさらに悲惨になっていたんだと思いました。しかし、いざ自分が出来るのかと言われればWEタイプの人間にはかなり荷が重いことだと思います。それだからこそ、大多数のWEタイプは、紛争の無い世界が実現出来るように、自分のやれる範囲で、他人を理解し、思いやり、尊重して生きていかなければならないと強く思いました。