北大西洋に沈んでいる豪華客船タイタニック号の残骸を見学する潜水艇ツアーが悲劇的事故に見舞われました。

 最近、宇宙旅行のようにこれまでは民間人では不可能だった場所への民間のツアーが行われるようになって来ました。かつては、宇宙空間への飛行にしても、高度深海への潜水にしても、科学技術の発展の為に、専門家の高度な技術開発と専門的で高度な技能を習得したプロの乗組員で、実行されて来ました。その過程で、尊い犠牲があったのも事実ですが、乗組員達はその危険性を承知で、人類の科学発展の為に任務を務めていたと思うのです。

 しかし、それらは民間人がお金を払って参加するのとは次元が違うと思います。商業的なツアーであるのなら、すべてのリスクに何重も対策を講じていて、万が一トラブルが発生しても、乗客の命を守ることがビジネスとしての基本的考え方だと思います。

 そのように考えますと、今回の潜水艇の事故はリスクマネージメントにおいて不充分であったのではと思います。このツアーの主催会社の元従業員の証言によれば、観測窓の耐圧性不足や通信系統のトラブル時の対策不充分など複数の課題を放置したままで、今回のツアーが実施されてしまったように思えます。

 多分、ツアー参加者は、万一の事故で命を失う可能性があると言うことも含めて、承諾書にサインしているかもしれませんが、それで免責されるのは契約上の問題であって、本来、考えられるリスクに対して最大限の対策をすることを怠っていいとはなりません。

 今回はツアー会社のCEOが乗船することで、絶対に大丈夫だと言うセールストークに参加者は楽観的に考えていたかもしれません。

 歴史を見れば、人間が未踏なところへの冒険に命を懸けた人々がいたのも事実ですが、彼らはその危険性を熟知した上で、最大限の対策を講じ、それでも危険であることを認識した上で、命を懸けていたのです。そのような冒険と、冒険ライクな商業ツアーを決して混同してはいけないと思います。そうでなければ、また同じような悲劇が繰り返されると思います。