また、新しい主義、政策、教育を考えるにあたって、人間の本来持つ特性を十分に考慮することも重要であると思っています。
自身の人生の中で、ひとを理解することに、後で述べる観点が重要であると気が付いてきたのは、初めは小学生の頃でした、その頃は、何となく大人の世界のいうものが、胡散臭いなと感覚的に感じていました。教科書に書かれていることと、現実の世界とは随分かけ離れているような感じがしていました。中学に入ると、今でもはっきり覚えている印象深い出来事がありました。理科の先生ですが、どちらかというと強面の感じの方でして、強烈なプロ野球の某球団のファンでした。あるとき、確か一時限目の授業が理科で、その先生が教室に入って来られるなり、今日は非常にむしゃくしゃしていると仰って、私も含め数人の生徒が、前に呼ばれて立たされました。そして、順番に張り手を食らったのでした。前夜の応援しているチームの負け方に相当腹が立ったということでした。もしかしたら、我々の態度にも、何か問題があったのかもしれませんが、その出来事があまりにも強烈過ぎて、その野球チームが負けたことで起こったという記憶しか残っていません。その時代は、先生は絶対的な存在で、誰も告げ口をしようともしなかったですし、例えこの事柄を親に伝えたとしても、親はお前達が悪かったのだろうと、真面目に聞いてくれなかったと思います。現在であれば、きっとその親は、学校に怒鳴り込んでいたと思いますが、その当時、先生は絶対的に正しいと信じられていたようです。私は、そのとき相当悔しい思いをしたのですが、後になって思ったのは、世の中にはこの事例以上の理不尽なことが多々あるし、社会、大人の言う事を鵜呑みにしてはいけない。道徳に描かれているような善良なひとが多く存在する世界は幻だと。この事を理解できただけでも、学校に行った大きな成果かもしれません。
その後、大学へと進み、その間、いろいろなアルバイトをしたりして、社会には様々な人達が存在し、様々な考えを持っているということに触れることが出来ました。もちろん、社会に出て、会社に就職してからも、いろいろな人達と出会うことになりましたが、成人するまでに、ほぼ感じていた次の考えで、いろいろな事象を理解できることに気が付きました。
人は、偉そうに言っても、生物の一種です。生物のDNAに刻まれている行動プログラムには、自己のDNAの保存、繁栄ということが基本となっています。これが、自分が可愛い、自己中心的、利己主義というものにつながっていると思います。もちろん、自己を犠牲にしても、自己のDNAを守るということも、知らず知らずに持っているのも確かです。それが他人への思いやりなどということにもつながっていると思います。少しわかり難いかもしれませんが、自己のDNAを守るために他者を守るということ、「情けは己の為ならず」ということでしょうか。私の根底には、同じ社会、地球に暮らしている以上、自身のDNAをなるべく永く守るためには、社会、地球全体も守るということが、一番重要な考えであると思っています。
単純に「自分を守ること」と、「他人を守ることが自分を守ること」をどうバランスしていくかは、個々人で異なると思います。そういう意味で、多種多様な考え方を持ったひとが存在するのですが、ひとを理解しやすくするために、大まかに三つのタイプに分類したいと思います。まずは、自身で気付いているかいないかはあるのですが、他人のことを理解し、他人の立場にたって考えられ、行動できる人達をAEと呼びます。他人のことを全く考えずに自分の欲望を達成することができる人達をDEとよび、その中間の人達をWEと呼ぶことにしましょう。非常に乱暴なのですが、AE、DEは、全人類のそれぞれ数パーセント程度で、残りの大多数はWEであるというのが、私の感覚的な印象です。
次に、それぞれの特徴をおおまかに示しますと、
①AEは正当に、真面目に働くひと、DEは正当に、真面目に働かないひと、中間派がWEで、出来れば楽をしたいが、生きるため、法律で規制されているために、正当に、真面目に働き、そのときの環境に支配される。例えば、ひとに見られていなければ、サボったり、楽をしたりする。
②AEは、ひとに見られていなくとも、善行を行うことができる。WEは、ひとに見られていなければ、悪を働くこともある。DEは、ひとにわからないように悪を働く。
③WEは、そのひとの保有する知識によってAEに近いひとになるか、DEに近いひとになるかが決まる。知識とは、知恵に通じ、自分の行動が、他者や社会にどのような影響を及ぼすかを判断する材料となります。また、ひとが言うことの、正邪、善悪、正誤などを見極める材料ともなります。
このように人をおおまかに分類して、いろいろな現象を考えることで、その行いを理解出来、その理解の上に、より良い世界に進んでいくべき道が見えて来ると思います。