マイナンバーカードを健康保険証として機能させる事が進められていますが、いろいろなトラブルが噴出して、国民からの不信感が高まりつつあります。一部には、マイナンバーカードを返納する運動が起こっています。

 元々、コロナ禍で、国民に給付金を配ったりするのに労力や時間がかかり過ぎたり、トラブルがあったりと改善が望まれていました。このようなときに、マイナンバーカードと個人口座を紐付けできていれば、タイムリーに国民に支援を届けられるのではないかと、マイナンバーカードの普及と機能拡張に期待が寄せられていました。

 このような国民皆カードは、政府、自治体が国民を管理する為に普及を狙っていたのですが、そのような意図に懐疑的な国民も多く、普及が進んでいませんでした。そこで、使用者側のメリットを増やさなければ国民が協力してくれないと、いろいろな機能を付加していくことが始まりました。最初はカードの取得と健康保険証、個人口座との紐付けで、マイナポイントをプレゼントすることで、普及を図りました。今回、健康保険証機能でのトラブルが続出してしまったのです。

 新しいシステムを導入するときに、いろいろな問題が起こることはよくありますが、間違って他人のカードに紐付けたりしたような、あまりの初歩的ミスに国民の不信感が高まったのは当然のように思います。

 このカードは、今後、運転免許証などいろいろな機能を付加していく計画なのですから、致命的なトラブルは許されないと思います。まずは、緻密に事前検証していってから、システムを稼働すべきなのに、現実は早急過ぎるようなスケジュールにこだわり、このような結果になってしまったのだと思います。

 私は、今回のボイントは、大臣、官僚幹部のマネージメント能力の欠如だと思います。特にリスクマネージメントと呼ばれる、新規にシステムを導入するにあたり、どういうリスクが考えられ、リスクを出さないようにする方策、リスクを潰す為の対策の全体像を誰が把握し、それで指示命令していたかと言うことだと思います。

 多分、大臣や官僚幹部は、どのようなシステムにしたいかを抽象的に描き、それを具現化するアクションプログラムの設定やその実行については、部下やシステム外注先に丸投げし、またデータのインプットについても、期限だけはやかましく指示して、その実行部隊の実状やそこから類推されるトラブルリスクなどまで深く考えていなかったのではと思います。

 総理や担当大臣は、確かに専門的に不案内であるとは思いますが、有能な専門家、ブレーンの知恵を借りて、かなり細部にまで理解、把握して、重要ポイントを押さていなければなりません。これまで政治家は官僚に頼り過ぎていて、また官僚も細分化された担当範囲と責任範囲で、全体的にマネージメント出来る人がいなかったのではと推察できます。

 マイナンバーカードの普及と言う、重要なミッションに対しては、かなり高度で広範な実務をコントロール出来るリーダーを配することが重要なのですが、従来の役所の慣例に従っていては、うまく回らないのは当然であり、そのことを充分に認識した人が全体をマネージメントすべきだと思います。