元プロ野球阪神タイガース横田慎太郎選手を題材にしたドキュメント番組を見ました。

 鹿児島実業高校で、四番打者、エースで活躍し、2013年のドラフト会議で、阪神から指名され、外野手として入団しました。2016年、スタメンで一軍デビューしましたが、一軍に定着は出来ませんでした。翌年のキャンプ中に頭痛が続き、キャンプ後の精密検査で脳腫瘍と診断され、その後の入院加療により、一旦、症状が寛解しましたが、視覚不調により、現役引退を余儀なくされました。

 特に印象的だったのは、二軍での引退試合で、定位置であるセンターに就き、走者二塁のときの相手方のセンター前ヒットを捕球し、本塁へノーバウンド送球して、走者をアウトにしたことです(後日、奇跡のバックホームと称えられました)。試合後の挨拶で、関係者、ファン、両親家族への感謝を述べて、最後のプレイが、神様からのご褒美だったと、自身の野球人生を充実したものだと締めくくりました。

 引退後、これらの経験を、著書に記したり、講演会で話したりして、病魔に侵されても、周りの人達の助けと、頑張りで、前向きに生きて行くことを語り、多くの人達に勇気を与えることに努めておられました。

 残念なことに、2022年に腫瘍が再再発し、今年、7月、28歳と言う若さで、死去されました。

 恵まれた身体能力、体格、センスなどから、非常に期待された野球選手でしたが、病魔により、その才能を発揮出来ずにこの世を去ったことに非常に残念な気持ちになりました。しかし、その生き様を見て行きますと、深い哀れみとともに、短いながら人生を全うした充実感を感じてしまうのでした。

 人間の寿命は、ひとりひとり異なります。そして、それは自分の意のままにならないもので、自分に与えられた時間そのものが、自分の寿命なのだと思います。生物として、平均寿命というデータは存在しますが、個々人の寿命がそれで決まっている訳でもありません。そのひと個人に与えられた時間に長い、短いはありますが、それが自分の寿命なのです。そして、その寿命の中で、いかに充実感を感じていけるかが、幸せの鍵なのです。

 確かに、健康で長生き出来れば、それに越したことはありませんが、それだけでは、幸せにはなれません。横田慎太郎氏の生き様を見て、理解出来ましたのは、自分に与えられた寿命という時間の中で、どれだけの遣り甲斐を感じることが出来たかということです。そして、その充実感は、能弁だらりと生きているだけでは決して味わえません。彼の場合は、辛く、苦しい練習や、病魔との熾烈な戦いに諦めずに、前向きに前進したことで、その充実感を強く感じられたのだと思います。

 我々一人一人、異なった人生を歩む訳ですが、何を努力し、研鑽し、打ち込むのか、人生の道の中で、見つけ出し、そして、その努力の先に、生きて来た喜びを実感出来るような充実感を味わおうじゃないですか。