日本大学アメリカンフットボール部の寮で大麻と覚醒剤が見つかり、部員が一人逮捕された事件で、日本大学の理事長、学長等による記者会見が行われました。
特に、大麻らしい物体を発見した後、警察に届けるまでの時間が長すぎたのではないか、この事件が明らかになった時点で林理事長は薬物の発見を強く否定していたことなどについて、隠蔽などの疑念が起こっていたことに対して、経緯を説明されていました。
一連の説明は、ある程度納得出来るものではありましたが、大きな組織の動きの悪さ、情報管理、開示についての不透明感を感じざるを得ませんでした。また、個人的に残念だったのは、林理事長が説明も質問への回答もほとんど原稿を読まれていたことです。作家としての自分の生の言葉を聞きたかったです。
これまでの不祥事続きの日大のイメージを回復させる為に、理事長以下大学幹部が一掃されていて、改革が始まって一年強の時点でのこの事件には、精一杯真摯に対応しようとしているのは感じられましたが、私が一番違和感があったのが、薬物が鑑定された時点で、出されたアメリカンフットボール部の無期限活動停止処分です。
この問題が、多数の部員による組織的な犯罪であるのでないのなら、ほとんどの部員は真面目にアメフトに取り組んでいる訳ですので、彼らの活動を止めることはあまりに残酷な対応であると思います。私が理事長、学長であるのなら、罪の無いアメフトの部員のことについても心を配ることが大切だと考えると思います。ですから、まだ、どれだけの部員が関与しているか不明な段階なので、それが判明するまでは、当面活動停止にすると発表すると思います。そして、捜査が進展して、一部の特定の部員が実施したことであると判明したら、一時的活動停止処分を解除するべきだと思います。もちろん、犯罪を起こした当事者が逮捕され、罪を償う為に、学業も部活動も出来なくなるのは仕方ないと思います。
もし、連帯責任を問われるとしたら、それは軍隊の悪しき習慣でしかありません。
未だに、高校野球などの不祥事発覚時でも、そのような連帯責任的な処分が行われるのを見ますと、学校での部活動の本来の意味合いを考えさせられます。軍隊のような非人間的な組織では、個々の人間の権利、尊厳など無視されてしまいます。兵隊は単なる殺人マシンとして、上の命令通りに動くことを最優先されるので、そのような連帯責任のようなやり方をよしとするのです。一方、学校の部活動は、教育の一環であり、スポーツを通じて、様々な角度での人間形成に役立てるものだと思います。
今回のような教育の場で起こった事件は、部員や学生ひとりひとりのことを忘れてはいけません。それらを全否定するような連帯責任的な処分はあってはならないと思います。教育に関わる者は、その処分によって夢や目標を絶たれる学生にどんな影響があるのか、真剣に考えて欲しいと思います。