人は皆ひとりひとり異なった存在です。同じ人はひとりとしていません。その違いがそれぞれの個性であり、特徴を形作っています。それが全ての基本です。その違いをそれぞれがお互い尊重し、認め合って人間関係、社会が形成されています。しかし、現実は自分との違いを認めない関係がどこそこでも見られます。それが諍(いさか)い、争い、差別、いじめなどを生み出して行きます。科学的に証明されることには、誰が見ても正しいと言えることもありますが、世の中にある問題はどちらが正しいとは証明できないものが多いものです。だから違う考えの人達の考えによく耳をかさなければ、争いしか生まれません。
国単位、宗教単位、主義単位などの場合は、悲惨な戦争につながります。一番怖いのは、多くのひとが戦争などしたくないと思っていても、それぞれの組織のリーダー達が戦争に引っ張っていくのです。だからこそ、このブログでリーダー達を選ぶことの大切さを何度も主張してきたのです。
今回は、別の観点で個々人の違いから考えられる重要な点を述べてみたいと思います。
ひとはひとりでは生きていけません。だから、仲間を作ろうとします。そのとき、いろいろな観点で、同類というものに目をつけグルーピングします。反対にそのグループに当てはまらないものを敵視する傾向にあります。要は、どう目をつけるかによって、いろいろな仲間のくくりが出来るのです。たまたま非常に区別がつきやすい、例えば男と女、白人と黒人、キリスト教とイスラム教などでは、古来から差別の温床になっていました。しかし、例えば男と女の違いは在っても、同じ男の中にもいろいろな個性があります。その個性をじっくり見てみますと、同じ男の中での個性の差が、ある男と女の個性の差より大きいこともよくあります。つまりひとつの点で区別をつけられたからと言って、それだけで、同種のひとであるとは言えないのです。白人の中にも心優しいひともいれば、そうでないひともいますし、黒人でも同じことが言えます。なのに、黒人をひとくくりにして蔑視したりすることが差別なのです。この構図を冷静に見れば、ひとを自分の都合のいいある部分でグルーピングして、対立することがいかにいい加減で悲惨なことだと言えるのではないでしょうか。
ひとは本来、千差万別の個性を持っています。そのようなひとに対して、意図的にある異なる部分を拾い出し、そのことで差別したり、仲間外れにすることは容易いのです。もともとみんな沢山の違う点を持っているのですから、故意にすればいくらだってその差を強調できるのです。要するに悪意を持って特定なひとを差別できるのです。差別とはそのような人間の悪意から生まれて来るものであって、人間本来に備わっているものではありません。
少しでも多くの我々民衆が、そのことに気付くことが重要なのです。自身の欲望を達成するために、多くの民衆を扇動するひとはどの時代にでも現れます。極端な例を示しますと、ヒトラーは、ドイツの不況はユダヤ人がおいしい仕事を独占し裕福に暮らしているから我々ゲルマン民族は貧しく暮らすはめになっている、そこで、ユダヤ人を排除しなければならないと民衆に主張し、その考えが認められてしまいました。確かにそのような傾向はあったとしても、ユダヤ人すべてが犯罪を働いたり、ゲルマン人を抑圧して富を得た訳でも無く、多くのユダヤ人は努力の結果として富を得ていたと思います。ヒトラーは、貧困に喘ぐ民衆に、その憎悪の対象としてユダヤ人を悪者にして、その民衆のパワーを利用して、他国への侵略戦争へと駆り出して行ったのです。このように差別の対象を作り、それに対する憎悪のパワーを個人の欲望を達成するために利用するケースが歴史には多く存在します。これほど大きな作為ではなくとも、我々の身近にも同種のケースは存在します。例えば、学校で、ある生徒が自分の気に入らない別の生徒を排除したり、虐めたりするために、その生徒の個性(他のひとと違う点という意味で、この場合この個性は弱点になりますが)、例えば運動神経がよくない場合、この子が我がクラスにいるから、運動会やスポーツ大会に負けるんだ、こんな子は追い出してしまおうと虐めたりし、クラスの生徒を扇動し、生徒達も自分が虐められたくないので、虐める側についつい立ってしまうと言うケースなんかは良くある例です。
こういう差別や虐めを生み出さない為にも、ひとはみんな千差万別の個性を持っている、その個性の中の強みを活かし、弱みは、カバーし合うということを忘れずに、ひとを尊重し、また自分も尊重されると言った社会を目指さないといけないのです。
違いを認め合い、長所は活かし合い、短所はカバーし合う。この精神があれば、世の中から、差別、大きな争いはなくなるでしょう。