ノーベル平和賞を受賞したバングラデシュのムハマド・ユヌス博士は「現在の教育では、雇われ仕事に就くというマインドセットが刷り込まれており、本来持っている創造性が発揮されなくなっている。人間は生まれついての企業家であることを意識してほしい。」と述べられています。
これは、現在の教育の問題点を指摘していると言う点でその通りであります。日本でも、いい大学を目指して受験勉強に励み、そしていい企業に入り、また官僚、医者、法律家になることを目標にしているような教育システムであると感じられます。近年まで、このような職業に就けば、裕福な生活を送れるとも思われていましたが、ここに来て、そのようなコースに乗っても、それほど旨味があるとも思われないことが露呈して来ました。そういうことで、早い人は学生の間から、事業を起こそうと試みる人も増えつつあります。
このことは、資本主義社会の真実、つまり人を雇って事業を成す側と、逆に雇われる側の二種類で構成されていて、前者、つまり企業家に多くの富と権力が偏っていくということに気が付いた若者が増えて来たと言う事だと思います。
資本主義はもともと資本という富を持っているものが有利に富を増やしていけるシステムだと思います。一部の超富裕層がその財力を武器に、多くの企業を支配し、その企業が拡大し、多くの利益を獲得出来るように、優秀な人材を雇えるように、政治家に働きかけ、そのような人材を育てる教育システムを構築して来たからに他なりません。
私自身、ユヌス博士の言われていることに全面的に賛成ではありません。確かに、豊かな富を獲得するには企業家を目指しなさいと言うのは、資本主義社会においてはその通りだと思いますが、みんながみんな企業家を目指すのでは、社会に必要な多くの機能を担う職業に就く人が足りなくなってしまいます。
博士の言われている人間の本来持っている創造力を発揮するように教育することには賛成ですが、そうだからと言って、企業家を目指すことだけがすべてでは無いと思います。一番重要なのは、個々人の持って生まれた適性に合った職業にそれぞれが就くことだと思っています。そのような職業に就くことが出来れば、適正さえあれば、その職業に必要な創造力を発揮できることは間違い無いと思います。だから、それぞれが自分の得意で、充実感を感じる能力を磨き、その能力に合った職業に就けるような教育システム、社会システムに変革するべきだと、私は主張しているのです。
もう一点問題なのは、資本主義は一部の資本家、企業家に富が集まってしまうシステムであると言うことなのです。富は社会への貢献度で分配されるべきであり、富を持つ者に富が雪だるま式に集まって、富が大きく偏在することにはブレーキをかけなければなりません。
現在、貧富の格差がどんどん広がって行くのは、こういうシステムである限り必然的な事なのです。富は社会への貢献度によって分配すべきです。現在では黒子のように見えにくい部分で社会を支えている職業はいっぱいあります。そういうすべての職業に光を当て、ある程度は富を再分配出来るようにすれば、社会はもっとも効率よく生産的になり、その結果、貧困が減少し、紛争も無くなり、平和な世界が実現するものだと思います。
具体的にどのようにするかについては、このブログの1.から15.にも目を通して頂ければ幸いです。