ジャニーズ事務所の二回目の記者会見での進行について、質疑応答の時間に指名してはいけない人物のリストがあった等いろいろな問題が指摘され、新経営陣に対しても、その信頼感が揺らいでいます。

 私自身、社会生活の中で、記者会見、株主総会、その他いろいろな会議などで、主催者が自分達の意図したように会が進行するように画策する姿を垣間見て来ました。

 公式には、限られた時間にスムーズに会の目的が為されるように、方策を企てるのは当然であるとされています。しかし、実際は、主催者側のトップ、例えば、社長や委員長が会を運営する部下達に対して、問題の無いようにせよ、異論が出ないようにせよと指示したりしていることがよくあります。部下は、自身の査定に響くと、過剰なまでの対応をすることもあるのです。

 民主主義では、いろいろな意見をぶつけ合い、その中から最善の解を導き出すことが求められますが、現実的には意見の異なる人達同士での議論を噛み合わす為には、確かに、多大な時間と根気が必要であり、特に進行役がうまく振る舞わなければ、場が紛糾するばかりで、とても有意な結論に辿り着けないことになってしまいます。だからと言って、主催者側は自分達の主張を通すことだけを会の目的とすれば、反対意見を排除する策を講じることになってしまうのです。このスタンスが一番問題なのです。本来の会の目的は主催者側だけでは考えつかなかったような色々な意見も俎上に乗せ、最も優れた結論を導き出すことだと言う事を理解しないといけません。そうであれば、もし、主催者側の意見、主張が正しいのであれば、どんな反論や異論が出ても、論理的に否定することが出来る筈です。そう出来ないのであれば、その意見、主張は改善の余地があると言うことなので、自分達の意見、主張を変えざるを得ないことになっても素直に受け入れると腹を括っておけば、異論を出ないようにするという画策などする必要は無いのです。

 残念ながら、人間は自分の考えた意見や主張が一番であるとしたい傾向があります。これは独裁者的な発想で、自分に都合の悪い情報を隠したり、間違った情報を流したりすることと根は同じなのです。私が常に独裁を否定しているのは、どんなに優秀な人であろうと、ミスをしない人はいません。いつも一番正しい判断を出来る訳もありません。だからこそ、最も効率良く、効果的に、最善を求めるならば、広く衆知を集めて議論し、答えを導くことが必要なのです。

 今回のジャニーズ事務所のような一企業にもその理論は有効でありますし、また、故ジャニー前社長がどんなに優れたショービジネスの才能があろうが、故メリー前副社長が彼の能力を活かし、芸能マネージメントに長けていたとしても、すべてを彼のやりたいままに放置しているとこんな大きな犯罪を犯してしまうのも人間なのです。

 ですから、ジャニーズ事務所の新経営陣は閉じられた空間で考えた自分達の案に固執しないで、例え反対意見、異論でも、真摯に耳を傾けて、最善な案を構築していただきたいと思います。