前回のブログで、この世の中は無駄なこと、効率悪いことが多いと言う話をしました。

 もちろん、無駄そうなことでも、意味のあることもありますし、人間、心穏やかに過ごすときも必要で、そのときは、効率なんて考えない方がいいと思います。

 しかし、事、仕事に関しては、無駄を省き、効率的に、効果的に事を運ぶことが非常に大切だと思います。特に、税金の使用を前提にしている公共的な仕事では、さらに無駄を切り詰め、少しでも少ない投資で、大きな成果を上げるように努めなくてはなりません。

 効率的、効果的な仕事をする為の極意があります。それは、自分の行動に対して、何の為にその行動をするのかを突き詰めて考えていくことです。

 簡単な例を示しますと、前回の交通違反取り締まりを考えてみましょう。警察官A氏が、上司から、Z地点にある一時停止箇所で、違反者を検挙しなさいと命令されたとしましょう。彼に問題意識が無ければ、上司から言われたことを忠実に実行すれば良いので、この活動を一生懸命実施します。一方、警察官B氏は、何の為にこの活動をするか上司に尋ねてみました。すると上司は、署長から、交通違反検挙件数を増やしたいと言われて、いつも違反者が多い、この地点での取り締まりを指示したのでした。そこで、B氏はその背景についてさらに深く探ってみました。署長はどうして交通違反検挙数を増やしたいと思ったのでしょうか。署長は県警本部から交通安全活動を盛り上げて欲しいと言われていました。そこで、署長は他の警察署との比較が分かり易い、交通違反検挙件数を増やして、交通安全活動が活発であると示したかったのです。さらに県警本部の交通部の責任者が交通安全活動を盛り上げろと指示したのは、県警本部長から、当県の前年の交通死亡事故件数が全国で10位となって、警察庁交通局から、今年は是か非でも死亡事故件数を減らすように指示が出ていたから、交通安全活動を盛り上げないといけないと思ったからです。結局は、交通死亡事故を減らしたいのが本当の目的であったようです。

 これはあくまで作り話ですが、大きな組織では、最下部の組織に指示・命令が伝わるときに節目節目の箇所で、それぞれの人間の判断が介入して、いつのまにか、何の為の活動かが、分かり難いケースが多く存在します。その為、根本目標から見れば、随分非効率で非効果的な具体的活動になってしまうことも多々あるのです。

 これを防ぐには、上から末端まで、共有した目的意識を持つ組織となることが必要ですが、現実はなかなか難しいコミュニケーションの問題となってしまいます。そこで、どんな位置のポジションにいる人も、必ず根本目的に照らして、具体的な命令を考えることが大切なのです。人間ですから、介在している人がすべて間違い無く判断する訳ではないでしょうが、すべての人が根本目的に照らして、自身の命令を考えるようにしていれば、例え、途中で、間違った指示が出ても、どこかで是正がかかるのです。それこそ、今回の交通違反取り締まりのケースでは、A氏、B氏が、死亡事故を減らす為の取り締まりをしなければならないと考えることが出来れば、かれらの経験から、死亡事故のリスクが高い事故の種類はこうで、その危険個所はここにあって、それを防ぐにはどのような取り締まりをすればいいのかと、現場で、効果的な活動案を考えられる筈です。

 私は、どんな立場、地位にあろうと、その組織に関わる人が各自自分の行動がその組織全体の根本目的に照らして、自分の行動を考えられるようになれば、かなりの無駄を省くことが出来ると思います。

 さらに、そのような考え方が習慣になれば、どんなことが起こっても、ある程度は自分で判断出来るようになります。上の指示通りにいかないときに、どうしたら良いか、再度上の指示を仰ぐまで何も出来ないと言うような無駄を排除出来るようになるのです。

 指示待ちすることが当たり前になっている指示待ち人間ばかりの組織ほど、無駄な時間、労力を使うものです。

 一度、自分の仕事において、実務遂行の際、とことん何の為にこの作業なり、この行動をしないといけないのか、突き詰めて考えてみてください。そのように繰り返し思考して行けば、きっと新たな世界が見えて来るでしょうし、結果もついてくる筈です。