昨年度の日本の食料自給率は生産額ベースで58%、カロリーベースで38%と諸外国と比べても、低い水準で推移しています。小麦では、わずか13%、牛肉は35%(但し、飼料の自給率にしますと9%)と輸入に頼っているのが現実です。その中で、米は100%近く、自給率全体を支える最後の要となっています。

 しかし、その米生産についても大きな問題があります。これまで、海外品の輸入に高い関税をかけて、日本の米価を維持して来ましたが、過剰となった米から麦、大豆などへの転作に、大量の補助金が交付されることによって、米の減反が進み、一方、麦や大豆の生産ノウハウを持たない米農家が転作しても、低品質の作物であったり、その為に補助金目当てで、種は蒔いても収穫しない捨てづくりが起こり、かえって自給率は低下してしまうと言う皮肉な結果になっています。

 また、米生産農家の生産者年齢が平均70歳となって来て、後継者問題がずっと叫ばれてはいても、政府は効果的な手を打てずにいます。このままで推移しますと、自給率の要であります米の生産量を確保出来なくなる大問題となってしまう可能性が高いのです。

 このような結果を招いたのは、政府、官僚の近視眼的な政策によるものと思われます。EU諸国と比べれば、よく判ると思います。第二次大戦後、日本もEU諸国も飢餓に苦しみました。EUは日本と同じく農業振興の為に、農産物価格を上げたのですが、その後遺症としての農産物の過剰に直面することになりました。このとき、日本は減反政策で農家に補助金を与え、生産を減少させましたが、EUは生産を減少させるのではなく、過剰分を補助金を付与することにより、海外に輸出することにしたのです。この政策の違いが今となって、食料自給率の差となって現れたのです。

 問題は、このような失策を認めたくない、政府、農林省は、これまでの政策の大幅転換という決定的な手をこまねいているのです。戦後以降の彼らの政策とそれがもたらした現状をきちんと解析すれば、今後、有効な手段はどのようなものか、判断出来る筈なのに、その反省の立場を隠す為に、国民への不利益をさらに続けて行こうと言う既存政策の延長線上にしか、策を労せずにいるのです。これらの裏には、JA農協という農業団体の存在があります。諸政策により、JA(JAバンク)に溜まっていった100兆円を超すお金を、農林中金が機関投資家として、運用することにより莫大な利益をもたらされることになっています。そして、そのような財力を背景に、政治団体としても強い存在となり、政治をも動かす存在になっているのです。このような国民の食料安全保障という観点ではなく、JAという団体の利益を追求するような政策を、政府が取って来たのが現実なのです。

 結局、それも自民党などの政党が、選挙のために進めて来たことなのです。本来は、国民の食を長期間に渡り安定化することを真剣に考え、それに効果的な政策を打ち続けていれば、日本の食料自給率の問題も、農家の後継者の問題も解決する方向に進めた筈だったのです。

 前回のブログでも述べましたように、現在の政治家達の本音は、国民の生活を良くすることよりも、己自身とその仲間が選挙に勝つことです。この状態を打破する為には、前回のブログに述べましたような、議員待遇と選挙システムの改革が絶対に必要なのです。

投稿者

弱虫語り部

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