2023年3月に行われたワールドベースポールクラシック(WBC)は日本が三度目の優勝を勝ち取りました。その栄光への道を記録したドキュメント映画がテレビで放映されました。

 監督、コーチ、スタッフが代表メンバーを選出し、交渉していくプロセスから記録されていました。選手達が所属する団体、球団、本人の意向を汲みながら、代表を決めていく姿に、大会の試合の前にも大きな山があったのだと理解出来ました。本番ひと月前からの合宿では、チームの一体化を上手く進める為に、スタッフ、選手の努力が感じられました。異なったチームに所属している選手達が日々の練習、生活の中でひとつになっていくことも、今回の結果につながった大きな要因だったと想像がつきました。個々に優れた選手を集めることも大切でしょうが、団体スポーツである野球は、チームとしての総合力をいかに高めていくかも鍵となっているのでしょう。メンバーの顔触れから、ドリームチームとも言われた今回の日本チームも、単に優れた選手を寄せ集めればいい訳ではないことを再確認出来ました。

 大会が開催されてからは、個々の試合はテレビで鑑賞していましたが、このドキュメント映画ではテレビに映っていない所での、スタッフ、選手の人間味のある姿も興味深く見てとれました。半端ない緊張感、悪い結果となったときの後悔や嘆きなど、スター選手であっても普通の人間とさほど変わらない面もあるのでした。

 後半は、有名な米国フロリダでの準決勝、決勝と何度見ても感動が呼び起こされる試合がメインでしたが、今回、再度、見てみますと、そのドラマチックな展開に奇跡が起こったとしか感じられませんでした。米国との決勝戦は、接戦で最後まで緊迫の状態が続き、最後の最後、チームメイトで両国を代表するトラウト選手と大谷選手の真っ向勝負で決着したなど、例え、誰かがシナリオを描いたとしてもそれが実現するなど、ほとんど不可能と思えることが実際に起こったことは奇跡としか言えないのではないでしょうか。

 そして、最もあり得なそうな奇跡は、メキシコとの準決勝戦であることは皆さんも同意していただけると思います。先発の佐々木投手がホームランを打たれ3対0の劣勢を吉田選手の職人芸とも言える一振りで振り出しに戻しても、またメキシコに先行されて、敗色も感じれる展開の中、八回に一点、九回には、大谷選手の出塁、吉田選手の四球と逆転のランナーも出た展開に、日本人としては大きな期待感を持ったのでした。しかし、ベンチとしては、この日4打席、3三振でノーヒットの村上選手をどうするかと言う局面に、バント、代打と考えられる状況に、強攻を選びました。まさかそこで村上選手に左中間フェンス直撃のヒットが出るとは、そして、大谷選手に続き、俊足代走の周東選手が一塁から生還して、逆転サヨナラ試合になるとは、応援する立場としては期待はしていても、現実になるとは、これこそ奇跡が起こった瞬間でした。

 この映画を最初から見ていますと、これらの奇跡に辿り着けるまでには様々な人達の思い、行ない、努力が続いていたことがその奇跡の瞬間に結実して為されたのだと強く思いました。

 世の中には、ドラマにも描けないような奇跡が起こることがたまにあります。WBCでは、多くの人の目の前で起こった奇跡ですが、実は、普通の人達でも、そのようなことが人生に一度か二度あると思います。私も奇跡としか思えないような夢のような目標が叶ったことがあります。しかし、奇跡と言うものは、ただ単に偶然だけで決まるものではないように思えます。それは、常日頃から、夢を持ち続け、追い続け、そこに向かって日々努力している状況の中に、ほんの僅かに起こるのだと思います。刹那的に生活をしているだけでは、ほとんど起こらないのではないかと言うのが私の考えです。そういうふうに考えて、こつこつ努力を積み重ねることも、奇跡のような幸せな瞬間をつかむ為の重要な条件のような気がします。

投稿者

弱虫語り部

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