65歳以上の一人暮らしの女性の相対的貧困率が44.1%にのぼることがわかりました。厚生労働省の国民生活基礎調査をもとに、平均所得の50%以下の所得の人の割合を相対的貧困率として算出したもので、今の社会でほとんどの人が享受する程度の暮らしを送れない状態の目安だそうです。ちなみに日本全体の貧困率は15.4%だそうです。また、65歳以上の人の三分の二が女性だそうです。女性の平均寿命が長いことから、女性の割合が高いのは当然ですが、昨今は未婚の割合も増えて来たこと、連れ合いに先立たれる可能性が高いこと、年金の構造がそのような人達に不利であるということで、65歳以上の一人暮らし女性の貧困率が高くなっているのです。
現在の年金制度は、標準モデルが結婚して子供二人の専業主婦家庭を想定しているので、このようなことになっているように思います。現実には、未婚率も高くなり、専業主婦より共働きの家庭が増えていますので、そのような実態に合った制度に改革していかなければならないと思います。
政府、自治体は、人々の暮らしをある程度豊かにしていく為に、手を打たなければなりませんが、不祥事の火消しが忙しく、なかなかそこに手をつける所まで行っていません。高齢者が貧困であることは、高齢者自身にも大きな問題ですが、そのような状況を見ている若い層が将来に不安を感じて生活していかなければならないことも大きな問題です。もともと資源の少ない日本にとって、知恵で付加価値を生むことが、成長にとって最も必要な点だと思いますが、若者が将来を心配して、安全志向に囚われてしまいますと、なかなか創造的な産物が生まれにくいと思います。この悪循環が、日本経済が世界に比べ停滞している原因にもなっているものと思われます。
岸田総理は、成長無くして分配無しなどと述べていますが、それは逆で、分配無くして成長無しという原則に気付いていないのではないでしょうか。成長無くして分配無しとするなら、国民は我慢して、成長まで頑張れと言っていることになりますが、腹が減っては戦は出来ないことわざを理解していないのでしょう。多数の国民が貧困に喘いでいては、知恵も浮かばず、労働生産性も上がらず、リスクをとって新たなことに挑戦する気概も生まれません。ただ日々の暮らしを維持する為にある意味単純な労働に勤しむことになってしまいます。
極端な状況を述べましたが、バブル時代以前のようにがむしゃらに働けば、経済成長していた時代とは違うのです。そのようなやり方はやりつくされ、現在の成長は創造的な知恵で厳しい国際的競争に打ち勝たなければ成立しない時代となっているのです。
だからこそ、まずは若者が老後の事を心配しないでチャレンジ出来る環境を作ることが最も重要なのです。その為には、高齢者の貧困問題を自己責任として放置していてはいけないのです。年金は若い層、現役労働層が支えなければと言う発想では、無理です。年齢に関係無く、富裕層が貧困層を支えるような仕組みにしなければならないのです。つまり、分配無くして、成長無しなのです。富裕層もこの原則をしっかり理解して、自分達だけ良ければいいと言う考え方を捨てて、自分自身、自分の子供達の為にも、分配政策に協力しなくてはなりません。長い目で見れば、それが日本全体を豊かにしてくれるのです。