新宿駅西口の再開発に伴い、新宿駅直結の小田急百貨店の解体工事が終わりました。この工事は全長230m、のべ床面積75,000㎡、地上14階という大規模なもので、更に工事個所のすぐ隣が新宿駅の16番ホームや西口ロータリーということで、通常の解体工事方法を使えない状況で、施工業者の大成建設の独自技術「テコレップLIGHTシステム」が使われました。この工法では軽量屋根フレームユニットで建物を覆い、完全閉鎖空間を構築することで、粉塵や騒音などの影響を90%以上抑えられるとのことであります。上から順に解体し、ワンフロアの解体が終わるたびに、最上階に設置した仮説の屋根が下層に下がって行くシステムです。NHKの番組で、この工事を取り上げていたときは、ナベブタ作戦と言っていました。仮説屋根の下の最上階に、多数の重機を持ち上げて、その階の解体を行います。但し、支柱は残していてそこに仮説屋根がジョッキで支えられています。その階の解体が終わると、ジョッキで仮説屋根を一階下まで降ろし、またその階を重機で解体して行き、これを繰り返す訳です。言葉にすると簡単に思えますが、各支柱のジョッキにかかる圧力を検知し、それがある程度均一になるように操作しなければなりません。また、工事現場の横が、線路や多くの人が行き交う通路なので、粉塵、騒音以外にも雨水などがその方へ流れないように一階と三階に新たに防水コートで仕上げてもいます。そんな細かい点にも配慮し、二年がかりで工事が進められたのですが、少しでもミスをすると甚大な被害が出るかもしれなく、周辺への影響を常にゼロにしないといけないことで気の遠くなるような神経の磨り減る日々だったと思われます。

 しかし、その甲斐あって、周辺を行き交う多くの人達がここで大掛かりの解体工事が行われていたことに築いていないほどでした。

 このような限られた空間での解体工法は日本で開発されたもので、多くの人の知恵と努力の賜物であったと思われます。人間の知恵は益々進歩していくのだと実感させられる工事でした。このような技術進歩に、我々の生活が支えられているのですが、一方、人間の営み、暮らしを律する方法は大きくは進歩していないように感じられます。代表的なのは、政治であり、我々の代表を選ぶ選挙です。

 技術進歩のように多くの人達の知恵を結集して、より良いものに変革して行こうとするなら、きっと政治も進歩させることが出来るものだと思います。しかし、残念ながらそのような創意工夫が政治の世界に取り入れられることはあまりありません。それを妨げているのは、権力を保有している既存の政治家であり、その政治家に取り入り私腹を肥やしている富裕層だと思います。

 人類はこの数百年で大きな技術革新を成し遂げましたが、そのような素晴らしい人類の知恵と努力を政治の世界にも活用すべきだと思います。その為にも創造力や実行力を持ったもっと多くの人材が政治の世界に関わるべきだと思います。そして、彼らが一部の権力者、富裕層の既得権益の壁をどのように崩すのか、それこそ、大型ビル解体工事のように、新たな方法を創造することに知恵を働かさなければならないと思います。今回の小田急百貨店解体工事のように普通に考えれば無理だと思うことも、真剣に考え抜き、トライすれば達成出来るのです。

 我々人類にはそのような力がきっと備わっていると信じたいと思います。