四月に入り、企業の入社式が次々と開催されました。多くの新人社員が胸膨らませて会に臨んだかと思うと、その日に会社に退職届けを出した人も少なからずいたそうです。
自分自身のことを思い出しますと、会社に入ってどのような仕事をするのか、どのような人達と仕事をするのかなどと言った今までに経験したことの無い事柄に不安を感じていました。もちろん、それまで親の庇護の下での生活から、自分で食い扶持を稼いでいくことに、責任を感じつつも、自立することへの期待感もあったと思います。
今、そのときの自分に言ってやりたいことは、「未知なことにあまり不安がってはいけない、それより、一歩進んでみることに集中しなさい。貴方の同期の新人達もみんな同じ境遇なのです。そして、今の貴方は会社に何の貢献も出来ない状態なのです。早く、会社に貢献出来るように、まずは色々な事を吸収することから始めてみましょう」と言ったことでしょうか。
つまり、自分の知らない、経験したことの無いことだからと、心配ばかりしていても何の解決にもならないのです。行動を起こすことで、いろいろなものが動き出し、それに対応することで、自分の力が試されて行くのです。そのような過程で、多くのことが学んでいけるのだと思います。まずは、入社したてのときは、ほとんどゼロベースから始まると思った方がいいのです。誰もが、大学等で学んだことが自分には身についていて、それに相応しい仕事につけるかどうかに関心があると思いますが、それはあまりに社会を甘く見過ぎているのだと思います。学問の知識は、役に立つこともありますが、それより社会に出てからの経験、知識の方が何十倍も意味のあるものだからです。そして、それらをいち早く吸収する為には、まずは思い切って行動に現わすことが大切なのです。
前述したような入社式後に退職した人は今の会社が自分の期待していたものと違うと考えていたそうですが、そのような評価を正しく下せるだけの経験をしたのでしょうか。その期待は世間知らずから出て来る単なる願望なのではないでしょうか。今、出発点にいる自分はゼロからのスタートだと謙虚に考えるべきです。せっかく縁あって入社出来たのですから、そこで会社というもの、給料を稼ぐと言うことを経験し、その中で会社とは何か、働くとは何か、金を稼ぐとは何か、そのような営みの中で、自分は何が出来るのか、何を会社にそして社会に貢献出来るのかを追求して行くべきです。そのように進んで行き、少し自分なりの答えが見えて来たときに、自分の方向と企業の方向があまり重ならないのなら、転職を考えてもいいと思います。そして、そのような経験を持って、転職活動をした方が、自分のやりたい仕事につける可能性も高まり、処遇も良くなることだってあると思います。
まずは、せっかく就けた仕事で社会の仕組みを知るまで頑張ってください。そのプロセスの中で、自分のやりたいこと、充実感を感じられることを探してください。それを見つけることが幸せな生活につながっているのです。