次のポイントとして、日本の食料自給率、エネルギー自給率を考えたいと思います。現在の日本の食料自給率はカロリーベースとすれば40%を切る水準です。またエネルギー自給率に至っては十数%とかなり低レベルです。現状認識でお話しましたように、世界中から高品質、低価格の製品を調達出来るのであれば輸入に頼っていても問題ないのでしょうが、これはかなり非現実的な様相を呈しています。今後は安定調達についてさらに不透明な状況に陥るかもしれませんので、食料とエネルギー自給率とも高水準に変えていかなくてはならないと思います。
まずは食料自給率ですが、小麦、大麦、大豆と言った米以外の主要穀物と牛肉、油脂類がかなり低自給率となっています。現在の食生活を考えますと、これらの輸入品を調達出来ないことになったり、価格が高騰したりすれば大問題となってしまいます。今後の様々なリスクを考慮しますと、出来るだけ早く国内産の増産で自給率を上げる必要があります。しかし、既存のやり方で増産することはかなり難しいと思います。農業、畜産業のやり方を大幅に変化させなければなりません。その決め手は、完全に管理され、機械化された太陽エネルギーと照明によるハイブリッド生産システムの開発です。現在、米国などは広大な農地を大型農業機械を活用することで、人件費もあまりかからない大規模大量生産という効率的な農法で低価格品を生産しています。しかし、日本の国土では同じような方法をとることは難しいのです。そこで、既存の農家主体の農業ではなく、組織化された農業企業を各地、各生産物に適した企業集団として作っていくべきだと思います。そりにより今までの農家では導入が難しい、ロボットや開閉屋根を持った太陽光、照明光ハイブリッドAI型環境管理システムを開発し、実用化していく必要があります。それにより、人件費の大幅削減、収穫効率の大幅アップを達成し、低コスト化に向かい、米国など農業大国と比べても品質、価格で同等な農産物を得られるようにしたいと思います。その開発を前提に、今後の農業政策を計画していくのです。畜産、水産についても、出来るだけ工業的な手法を取り入れていくのです。このような方法に変換すれば、日本の第一次産業の大問題である、労働者の高齢化や後継者不足、人手不足といった問題も解決出来ると思います。
次にエネルギー自給率の向上ですが、日本では、石油、石炭の埋蔵がほとんど少ないという事情で、大幅なエネルギー輸入国となっている訳ですが、太陽光や地熱、風力などの自然エネルギーの活用が進むことで、長いスパンを考えますと自給率の増加は進んで行くと思われます。しかし、かなりの時間はかかると思います。そのつなぎとして、日本近郊の海底に埋蔵されているメタンハイドレートの利用を強力に推進し、さらに不足分は安全を確保した既存の原子力発電所を稼働させることで、自給率を上げて行く方向を維持することが出来ると思います。但し、メタンハイドレートは石油、石炭などと同様、燃焼すれば二酸化炭素を生成するので、あくまで、石油、石炭の当面の代替物として考えておくべきでしょう。
エネルギーについても、食料と同様に、このような具体的なゴールを想定し、そこまでいかに効率的に進められるようなアクションプランをきっちり作成し、進めていかなければ、うまくいかない可能性もあります。その為のコントロール機能を政治が担わないといけないのです。
食料とエネルギーをある程度自前で調達出来るようになれば、国民の暮らしがかなり安定になるものと思います。
次回に続く