このテーマのその3で述べましたように、地球規模の動向が日本へ様々な影響を与える訳なので、日本単独でのビジョンを描くだけでは本来不充分であります。しかし、世界全体をコントロールするような力が存在していない現状では、なかなかその姿を描くことは難しいのです。
ここでは、私の描く理想的な世界をご紹介することに留めたいと思います。
世界の争いの種は一部の人間の思惑で作られた人種、宗教、主義などでくくられた国、組織などの人間の集まりどうしの諍い(いさかい)から生じています。しかし、現実には、すべての人々がその集まりを標榜している訳ではありません。たまたまその国に生まれたから、たまたまある宗教やある主義の家に生まれたから、その集まりに所属しなくてはならなくなった人が大半なのです。もちろん、生まれてからの偏った教育により、その考え方を正しいと信じて大人になった人も多数存在していると思います。
このような現実を前提に考えますと、理想的な社会は、誰でも客観的な教育を受けられること、そして、生まれた場所などに関わらず、自分自身でどんな場所に住み、どんな宗教、どんな主義を信じるかを選択出来ることが大切だと思います。
そこで最も重要なことは、国境を無くすことです。そして、それぞれの地域には国ではなく、自治区を設けます。自治区はあくまで地方行政単位でしかなく、その上位に地球政府が置かれ、自治区の代表達が、地球政府の議会を構成して、様々な問題をそこで議論し解決するのです。今の日本国政府が地球政府の位置づけで、都道府県、市町村が自治区となるようなイメージです。今の日本国での政府と地方自治体のような関係で、すべては議会での討論によって決まっていくのです。軍事力は自治区単位の治安維持の為の警察のような機能を担い、自治区間の争いを武力で決めるのではなく、地球政府議会の場で、話し合いで決めていくのです。また、国境はありませんので、世界どこに行くのも自由ですし、共通の貨幣で、為替交換もありませんし、自治区をまたぐ貿易についても関税もありません。
このような世界を作ることが出来てはじめて、自由貿易として、最もその製品、農作物などを生産するのに適した所で生産され、どの自治区もどこからでも調達出来るのです。このような世界になったとしたら、今の日本の政策のように、食料、エネルギーをそれぞれの地方で自前で生産する必要はなく、最もコストパフォーマンスの良い所から調達することが出来るのです。だから、逆に、現実の世界を前提にすれば、日本政府の方針は非常に危なっかしいものなのです。
これまでに私が描いた日本のビジョンは、このような世界を作ることが出来ないという悲劇的な現実を前提に考えたものにすぎません。それでも、少しでも、日本に住む人々だけでも、少しでも幸せになるように考えた妥協案なのです。
理想の世界への一歩として、国連を各国の上位機関と位置付けることで、少しは理想に近づけると思います。今のような、常任理事国である大国の拒否権で何も決められないようなお飾りの機関ではなく、各国の多数決で、国連の決めたことにどんな国も従わないといけないようになれば、少しは国同士の争いや問題に平和的解決を優先させることが出来るかもしれません。もちろん、これとて、多くの独裁者や国民より自分の地位や富を守ることを優先する勢力が激しく抵抗すると思いますので、そう簡単ではありませんが。