2010年頃制作のNHKのドキュメントを見ました。米国の75歳以上で構成されたソフトボールチームが、日本の同年代のチームと海を越えて試合をすると言う話です。彼らは、太平洋戦争時、10代後半~20代で、戦争を経験している人達ばかりです。命をかけて戦って、生き延びた人達です。米国人も日本人も同僚が殺されたり、飢餓の中で多くの日本兵が飢餓や疫病で亡くなった中でも何とか命をつないだのですが、そのような経験から、当時の敵国人に複雑な感情を持っている人ばかりでした。ただ共通するのは、今は平和の中で野球を続けて来た人達だったのです。

 対決場所は日米開戦の地、真珠湾のあるハワイです。現地に集合した両チームは、試合前の懇親会で初めて顔を合わしたのですが、中にはすぐに打ち解ける人もいましたが、なかなか異国人に溶け込むことが出来ない人もいまして、少し微妙な雰囲気が醸し出されていました。積極的に話をした人は、やはり自分の戦争体験を話題に出し、語られた当時のお互いの状況に驚き合う中で、仲良くなって行きました。試合は米国チームの打棒が爆発し、14対2と日本が敗れることになりましたが、お互い懸命なプレーで、いつの間にか皆は少年のような表情に変わって行きました。そして、その後のパーティーでは、最初のよそよそしさが消え、皆、打ち解け合って、その距離が急に近づいたように思えました。

 彼らの会話の中で、印象的だったものがいろいろとありました。敵、味方の米国人、日本人だと思っていたのが、みんな結局同じ人間だった。戦争の記憶は決して忘れることは出来ないが、許すことは出来る。誰だって殺し合いなどしたくない。などと、誰もが、今回の交流を実施してよかったと敵ではなく、友人になれたと喜んでられたのです。

 このように、戦争が起こったとき、戦地に出向き、命のやりとりをした人達の多くは善良な市民だったのです。戦争というもの、権力者達が敵国を倒さなければ、自分の国が大変なことになると喧伝し、多くの若者を洗脳して、戦地に派遣して来ましたが、それは権力者の地位、富を守る為の闘いだったのです。愛国心を煽り、故郷の為、家族の為に、敵兵を倒せ、命をかけろと言っていたのはほとんど嘘だったと思います。実際戦った若い市民達は誰も殺し合いなどしたくなかったのです。多分、上層部の命令が無ければ、お互い仲良く出来る人達だったのです。

 歴史を見て来ますと、戦争は我々庶民にとってどうしようも無い悲劇でしかありません。いつの時代にも己の欲望の達成を暴力で勝ち取ろうとする人がいましたが、彼らは、自分自身とその賛同者だけで事を起こすことに留まらないで、罪の無い弱者を巻き込んで、彼らの命を使って、富や権力を奪取しようとして来たのです。

 我々はこの事実をしっかりと認識するべきです。軍事力を使って、何かを為そうとする人達を決して信じてはいけません。国や宗教や人種など違っても、庶民の願いは非戦なのです。我々庶民レベルでは話合えば戦わなくとも何とか協力し合えるはずなのです。