ある意味、現在の物流はトラック運転手の長時間労働に頼っています。そこで、5月から、残業時間の上限が設定されました。これは運転手の過重労働の防止や、安全性の向上の為に為されたのですが、益々便利になって来たネット販売や産地から直送し、鮮度を保持したまま各地の名産が都市に運ばれるなど、我々ユーザーの利便を支えていた物流に影響することが懸念されています。
これに対し、大手の運送会社は輸送区間の中間地点で荷物を積み替えるように配送方法を見直したり、運転手を増やしたり、荷物の到着時間を遅らせたりして、対策を講じる会社も出ています。一方、中小の運送会社は、そのようなコスト高の方策に対応するのが難しく、長距離輸送から短距離輸送に切り替える会社も出て来ているようです。
このような状況では、輸送費の更なる値上げや今までのようには荷物が届かないことも考えられます。一方、運転手側も過剰競争で賃金も下がり、今回の規制で勤務時間が減って過重労働が無くなったとしても、さらに賃金が下がることにつながりかねないので、就業希望者減少に歯止めをかけるのは難しいと考えられ、運転手不足が深刻な問題となりそうです。
今後、自動運転により作業不可が大幅に減じられることは考えられますので、これまでのような大量の熟練ドライバーは必要なくなるかもしれませんが、かと言ってこのままでは運送会社、特に中小の運送会社の経営が好転することは難しいのではないでしょうか。
考えてみますと、運輸業界の構図を大幅に変え、業界にもユーザーにもプラスとなるような効率的な仕組みが必要になると思います。例えば、今の二次下請け、三次下請けが当たり前の構造を変えることは必要でしょう。大手の元受けが幅広い受注を握っていることがこの構造の由来だと思いますが、旧態依然のユーザーと元受けの関係に頼らなければ成り立たないような状態は非常に無駄が多く潜んでいます。ITやAI技術を駆使すれば、全国的にユーザーと運送会社を結び付けるシステムを構築することは可能だと思います。問題は誰がそのようなシステムを作り、そこに業界をまとめるかです。そうです。それをやれるのは国土交通省しかありません。
簡単にイメージを示しますと、根本は、ユーザーがどんな荷物をどれだけのを日程で、どこからどこへ運びたいと言うことをシステムに入力しますと、それらの情報をシステム上でまとめて、単独の車両で運ぶレベルか他の荷物と混載で運ぶのかなどの輸送形態、その輸送種類、例えば、常温、冷凍、冷蔵、危険物、毒物などと言った分類で、最適解を導き、その形態に対して、可能な輸送会社がオンラインで手を上げ、複数で競合する場合は、条件との一致度と輸送費で候補から受注会社を選択すると言うようなシステムイメージです。
これが出来れば、多重下請けは無くなりますし、効率良くトラックを活用出来、輸送コストの削減にもつながります。官僚とは、そのような民間では出来ない仕事を為すべきだと思います。そして政治家はそのような仕事を主導するように政策を立案するものであると思います。