NHKテレビの新プロジェクトXで、隠岐の島の島根県海士(あま)町のことが描かれていました。隠岐の島の中の一島を占める海士町はもともとは漁業が盛んな町でしたが、大幅な人口流出とバブル時代の大型公共工事への投資などで、バブル崩壊後に財政破綻寸前に追い込まれていた今世紀初めが舞台でありました。そのとき島に戻り再建を目指した町長の下、町役場の幹部がまず話し合ったのは、財政破綻を避ける唯一の方法は自分達の給与カットであり、全管理職がそれに賛同して、町長に提案すると、彼らの心意気に町長は自分は給与半分カットすると申し出たのでした。そのような彼らの姿を見て、一般職員で構成された役場の組合が、全職員の給与カットを申し出たのです。これにより、直近の破綻は免れたのですが、島の経済低迷を脱した訳ではありません。公共工事など土木建設工事から路線変更して、島特有の海産物を都会へ販売することを狙って、冷凍保存、加工設備に投資したのです。それまでは役場は定時で帰るのが普通であったのが、新しい産業を立ち上げようと必死で働く町長、役場職員の本気の姿を見るにつけ、町民も一致団結してその振興策に協力し、町長のトップ営業や島の町民が知恵を絞って開発した水産商品が功を奏して、島外への販売が伸びて行きました。また、唯一の高校の存続をかけた島留学という、島外からの留学生を島全体で受け入れる事業も進んだように、島外からの移住者も増え、人口は増加に転ずるようになりました。その結果、今日、島民全体が豊かで遣り甲斐のある生活を取り戻したのです。

 このような実話に、私は大変驚きました。それは私が国民、市民の生活を豊かにする為に、政治家や役人に望んでいた姿がそこにあったからです。

 これは小さな島の出来事ではありますが、国に焼き直しますと、今の財政逼迫し、国民が生活に困窮している日本の姿と何ら変わりません。そして、即効的な対策は、議員や役人の給与や経費を削減し、それで血を止めつつ、弱者に支援し、国を発展させるビジョンを描き、その方向に一致団結して知恵を絞り、行動して、みんながある程度の生活を送れるようにすると言うことなのです。議員、役人がそのような必死な行動を起こせば、国民は政治家や役所を信頼し、その政策に一致団結して協力するようになると思うのです。それで日本全体が活気を帯び、色々な面でいい方向に物事が進み始めると思います。

 海士町で出来たことを今の国政に携わる人達が何故出来ないのでしょうか。それは彼らの目的と心意気が違うからなのです。今の政治家、役人の目的は己が豊かになることですし、自分を犠牲にしてまで、国民の為の仕事をしようなどと言う心意気を全く持っていないからです。もしもそのように言われて心外であると言う、政治家、役人がおられるのであれば、是非、海士町と同じような行動をとってもらいたいものです。