あらゆる製品やサービスの値上げで国民の暮らしが大幅に圧迫されている中、定額減税が実行されて行きます。国民への支援という意味であれば、悪いことではありませんが、今のようなやり方でいいのでしょうか。

 官房長官などが言っていたようにいち早く国民のもとに届けたいと言うのであれば、シンプルに給付金でよかったのではないでしょうか。マイナンバーカードを活かす好機だと思いますし、未登録者へのマイナンバーカードの普及を考えれば、これを利用することはチャンスだったと思います。マイナンバーカードはいろいろなデメリットを指摘されていますが、国民にお金を届けるときに非常に役に立つことを実践して見せたらよかったと思います。それを見たら、未登録者の多くが登録しようとしたかもしれないと思うのです。

 そのようなチャンスを捨ててまで、どうして所得税、住民税の減税としたのでしょうか。多分、岸田総理のある思いがそうさせたのではないでしょうか。岸田総理は様々な名目で、増税を推進して来ました。足元で代表的なものでは、少子化対策の財源としての支援金制度の導入(国民一人当たり約500円の負担増)、国民年金保険料の引き上げ、森林環境税の導入など数々の増税を実施しようとして来ました。それでついたあだ名が増税メガネでした。このようなマイナス印象を払拭したいと考えて、減税をすることが彼にとっては非常に重要なのです。特に、これまで支持率が落ち込み続けていたことを考えますと、そのようなイメージには耐えられなかったのでしょう。

 しかし、そのような考え方をすること自体、国民からの支持が上がらない要因だったのです。うわべで取り繕っても本当に国民の為の施策を実行しなければ、誰も岸田総理を信頼しないと思います。今回の減税についても、それを国民がきちんと認識するように、給与明細などに明確に示せるように事務処理しなさいと支持したそうですが、そのような総理の指示により、どれだけの事務的な負荷が生じるか分かっていたのでしょうか。役人の負荷もそうでしょうが、企業サイドでも総理の言ったような姿で給与明細を発行する為に、どんな煩雑な作業が必要か考えていたのでしょうか。つまり、この負荷にかけた労力を新たな生産的な活動に振り分けていたら、どれだけの仕事をこなせたでしょうか。自分の指示でどれだけの人が動いて、それがどれだけのコストがかかるかを瞬時に判断出来るひとでないと、大きな組織のリーダーは務まりません。そうでないから、日本国の借金が膨れ上がる一方なのです。

 ただでさえ余裕の無い税金を出来るだけ有効に、効率的、効果的に使用することが腕の見せ所と思うのですが、全くそんなことも眼中に無く、国民へのアピールしか考えていない、そして、そのアピールも見え透いたうわべを取り繕うだけの策で、ほとんどの国民から見過ごされていて、それでかえって知恵の無い人間だと呆れられる始末になってしまいました。

 ことほど彼が何か手を打てば、打つほど、国民にソッポを向かれ、またまた支持率が下がっていく悪循環を繰り返していくのです。大体このような知恵の無い浅はかな人間では、国民の心をつかめる訳はありません。こんなアピールをするより、自分を犠牲にしてでも、国民の暮らしを支えることに全力を尽くしていれば、支持率なんて後からついて来ると思うのですが、どうでしょうか。