幸せの対象を自分自身の欲望と同一であると考えてはいけません。富や地位や権力などを求めて得る欲望は、叶えられれば一時的な満足感は得られますが、しかし、それらはどれだけ手に入れても満足出来るものではなく、際限無い底なし沼へと導かれます。その為に、自分の欲望を得ることがすべてに優先し、他人に悪影響を及ぼしても気にならなくなります。他人を不幸に落としても自分の欲望を達成することを優先することで、いずれは社会を不安に陥れてしまいます。結局は、大事な自分自身やその家族、知り合いをも不幸に巻き込んでしまうのです。
幸せとはそういうものではありません。世界が調和した状態にある中で、自己実現が叶うことでもたらされるのです。すべては調和のバランスで保たれた安定で平穏な状態に人間が置かれ、その中で、その状態を維持する範囲の中で個人の充実感を得ることだと思います。つまり、自分だけ良ければいいということでは本当の幸福感を味わえないのです。
私はこの調和という概念が非常に大切だと考えています。私の唱える考え方を新ハルモニア主義と名付けていますが、ハルモニアとはギリシャ語で調和を意味するのです。
自然界でも調和を保とうとする力が常に働いています。多くの生物は自然界の中で、調和を維持する様々なメカニズムを持っています。人間のような科学技術ではありませんが、いろいろな手段で情報をやり取りし、多くの生物がうまく生きていけるように自然と協力し合っているのです。それによって多くの生物がある意味平穏な暮らしを送れるようになっているのです。このようなことは、人間の社会でも見習わないといけません。
多分、調和の中で生きて来た生物として持っている根源的な部分からもたらされる精神的な感情の中に幸福感が存在しているのだと思われます。
このことを意識して幸福について考えてみますと、本当の幸福感が何であるか分かるのではないでしょうか。それは、調和を乱さない中での個の意識なのです。