日本がかつての勢いを失い、経済が低迷しているのには、いろいろな要因がありますが、ひとつには、管理(コントロール)しかしない人間達が蔓延っているからだとも言えそうです。

 社会は実業がものを生み出さないと始まりません。その活動を効率良く、効果的にするようにマネージメントしていくのも重要ですが、実業が無ければ何も生み出すことは出来ません。実業とは、泥臭い労働から成り立っています。農業、漁業、林業、鉱業、工業、エネルギー産業、水産業、土木・建設業、すべてそうです。どの世界でも、実務者が生産的な活動を行って、目的の産物を生み出しているのです。

 一方、管理とは、この実業的な活動が円滑に損をせず進むようにすることが目的です。本来は現場第一主義とか言われるように、管理はあくまで黒子の筈だったのですし、そのことで、本来の目的に適うような活動が出来るのです。

 しかし、いつの間にか、管理そのものが目的となったり、主役になってしまうようになって来ました。企業が不正に手を染めたり、業績が悪くなったりして来るのは、そのような主客転倒が起因することが多いのです。例えば、管理側が、実力とかけ離れて単に希望としてより儲かるように生産目標を設定し、現場にその数字を課すとしますと、その目標数字が現実的で無ければ、現場が不正したり、管理内部で不正したりすることにつながったりするのです。

 目標の数字は、何らかな裏付けが必要です。それはこれまでの実績に、様々な改良が加わって作られるべきものなのです。その為には、新しいアイディアを含む課題解決策が具体的に企画され、実行されなければなりません。管理と言っても、そのような意味を含む英語で言えば、マネージメントにあたります。しかし、管理を単なるコントロールとしてしかとらえていない人が多く存在します。コントロールとは、活動が計画通りに進んでいるかどうか監視し、必要であれば計画を修正することです。

 駄目な経営者、幹部は、コントロールに終始し、計画通り行かなければ、下を責め、現場を責めることしか出来ません。本来、経営者、幹部に必要なのは、マネージメントであり、ビジョンを描き、目的達成の為に組織全体に対して、頭脳(アイディア)を使って、いろいろと働きかけ、成果を上げることなのです。

 今の日本において、企業だけでは無く、政治の世界も、役所の世界も、そのようなコントロール主体の管理しか、しない、出来ない管理者が増えているのです。それで、威張り散らし、結果に対して責めることに終始するので、下の者達、現場がやる気を無くし、腐って行き、酷い場合は不正などにつながってしまうのです。

 泥臭い実業活動を尊び、その実態を充分把握した上で、現場があるから成り立っていると謙虚な姿勢で、何をすべきかを脳に汗して考え抜けば、組織をどのように動かせば良いかというアイディアが浮かぶことでしょう。出て来た結果だけを見て、あれこれ言うだけでは、組織は腐っていくばかりです。
 
 政治家、高級官僚、経営者、経営幹部の皆さん、貴方達が今の地位に居て豊かな生活が出来ているのは、多くの末端の実務者のお陰であることを再認識し、謙虚に、真面目に、そのような多くの人達を如何に幸せにするかを考えてください。そのような観点に立てば、組織全体が活性化するのです。そして、きっと今よりいい社会となっていくと思います。