黒柳徹子さんが執筆した「窓際のトットちゃん」で舞台になったトモエ(ヱ)学園のことが、NHKで放送されました。黒柳さんは幼少のとき、かなり個性的な子供だったようで、落ち着きが無く、周りと調和出来ずに学校を退学せざるを得なくなって、次に頼ったのがトモエ学園でした。
トモエ学園は、音楽教師だった小林宗作氏が昭和初期に創設した私立の幼稚園、小学校でした。その教育方針は生徒ひとりひとりの個性を重視するもので、大多数の学校で為されていた画一的な価値観にこだわるやり方とは一線を画していました。
そのような教育により、いろいろな個性を持った生徒達は、自分自身の価値、存在意義を感じて、人として自信を取り戻し、その後の人生を切り拓いていき、多くの人材を輩出していったのでした。
今でも、多くの学校では、標準的なプログラムに沿って、画一的な教育を押し付けるやり方が主体であって、その結果、落ちこぼれを作り、多数派からのいじめも横行している現実があります。それに比べ、すべての子供達が取り残されない、ひとりひとりの良い所を見出すことを狙いに運営されていたトモエ学園は理想的な教育現場だと思います。残念ながら、トモエ学園の精神はそれほど拡大して来なかったことは非常に残念だと思います。
私は幸せな人生を歩む為には、自分の個性、特性を把握し、それを活かして、適正のある職業に就き、苦しくとも、辛くとも、遣り甲斐を感じて、社会に貢献していくことが非常に重要であると考えています。その背景として、社会には多種多様な役割が必要でして、それらが我々の人間世界を支えているのです。そういうことが前提となって、人の育て方、教育というものが作られるべきだと思うのですが、残念ながら、今の教育現場にはそれはありません。100年近く前に創設されたトモエ学園には、すべての人を活かそうとする精神がありました。これまで教育を牛耳って来た頭の硬い教育学者や文科省、教育委員会の幹部がこのことに気付いて欲しいと願わざるを得ません。