インドの大財閥一家の結婚式が報じられました。驚くのは、結婚式という短期間の催事に、950億円も使ったということです。もともと、インドでは結婚式が人生最大のイベントとして非常に華美なセレモニーとなっているのですが、今回の規模は尋常ではないような気がします。この大財閥の力を広く誇示する為に、このような規模になったようです。招待客はインド国内に留まらず、世界の著名人、スターが招待されており、彼らへの引き出物は一千万円以上の高級腕時計などであったそうです。

 インドは歴史的にカースト制という階級制度が有名です。現在、カーストによる差別は禁止されてはいますが、階級社会、格差社会が完全に消滅した訳ではありません。大多数の隷属民や不可触民の子孫が貧困社会を形成しているのも事実です。そのような貧困民の存在を放置したままで、富裕層がこのようなお金の使い方をしていることに大きな違和感を感じてしまいます。自分の金だから、どう使おうが勝手であると思っているのでしょうが、その考え方には人間としての大いなる驕りがあると思います。

 財閥の家に生まれたから莫大な財産を保有しているのでしょうが、それはたまたま運が良かっただけであり、事業に成功したと言うのも、たまたまいろいろな環境が整っていたからと謙虚に考えるべきが、真実であると思うのです。だから、富裕層はその運命に感謝し、運に恵まれなかった人々を支援するのが本来の人としての生き方であるべきだと思うのです。

 私はそのような謙虚な精神が世界に平和で安寧な社会をもたらすと考えています。異常な格差は、多くの人間に貧困、飢餓をもたらし、その結果、いずれ大きな紛争へと続いていくのが、歴史の中で何度も繰り返されています。それにより、一時的な栄華を極めていた人々がいつかは没落し、あらたな権力者、その取り巻きの特権階級という富裕層が生まれては、消えていくのです。このことをよく理解すれば、今の富裕層が本当に長い期間の安寧を求めるのであれば、その財力を使い、貧困層を無くすように努めなければならないのです。

 賢明な富裕層はそのことを理解しないといけません。残念だったのは、慈善事業に熱心な大金持ちであるマイクロソフトの創業者であるビル・ゲイツ氏も、今回の結婚式に出席していたことです。彼は、仲間の億万長者達とともに、少なくとも財産の半分を慈善活動に寄付することを誓約していて、私の考え方に近いものを持っていると思っていたのですが、やはり、まだ自分達は特権階級であるという驕りを捨て切れてはいないのかもしれません。それほど、富というものは、人間の感覚を狂わすものなのかもしれません。

 一族で何兆円以上もの資産を保有している超富裕層が数百、数千は存在していると思いますが、彼らが華美なお金の使い方を止め、その財力で貧困層への大々的な支援を開始すれば、世界の飢餓、貧困は減少し、多くの紛争は解決し、安寧な社会が近づいて来ると思うのです。