NHKの過去のドキュメントを再放送している番組で、フィリピンの幼い兄妹を追いかけたものがありました。

 兄は十歳、妹は八歳で、両親と遠く離れた場所で親戚の家に居候して暮らしています。元々住んでいた地域は、イスラム武闘派勢力が政府軍と紛争になっており、一家で避難していましたが、生活費を賄えなくて、両親と彼らの下の兄弟は紛争地に戻っていました。兄妹は避難地に残って、市場などで買い物用の袋を売って、小金を稼ぎ、生活費を節約して、お金を貯め、親に送金して、一家の生活を支えていました。兄はお金がかかるので学校は辞めていましたが、妹には通わせていました。またこの地域はキリスト教徒が多く、イスラム教徒とは子供の世界でもいろいろないじめや差別がありました。

 この兄妹は、日本で言う所の遊び盛りの年代にも関わらず、小銭稼ぎだけではなく、居候の家では水汲みなどの重労働も負っていまして、小さいながらも労働に明け暮れる毎日でした。彼らが稼いだお金を大事そうに缶に貯めて、妹の学費以外ほとんど自分達の為には使わない姿を見ていますと、健気過ぎて、本当に可哀そうに感じてしまいました。

 未だに世界には、幼児から少年の年代が労働しているところが多く存在するそうです。日本でも、戦前までは、丁稚奉公として幼い子供が親元を離れ住み込みで働いていたことや、農家では働き手として、学校にも通わないで働いていた子供が大勢いたそうです。そのようなことに比べ、現代の日本では、ほとんどの子供が労働から解放され、学校に通っています。自分の部屋を与えられたり、自転車や高価なゲーム機を持っている子供も珍しくはありません。

 そういう日本に生まれたことだけでも、本当に幸せなことなのです。だからと言って、遊び惚けていては、また、嫌なことから逃げてばかりいては、きちんとした生活力のある大人になれないのも事実です。前述した番組を是非、日本の小学生全員に見せて欲しいと思います。それを見れば、どれだけ自分達は恵まれているかを認識出来ると思います。それまでは、自分より金持ちの家に比べ、不自由な境遇を呪っていた子供達も多くいたと思います。それで、腐って、非行に走ったり、いじめなどで登校拒否して、閉じこもり生活にハマり込んだりした子供もいたと思います。親ガチャに外れたと嘆いている子供もいると思いますが、そうではないのです。日本の普通の家庭に生まれただけでも、ある程度の自由があり、学校にも通えることが出来、将来幸せな人生を歩むことが出来るチャンスがあるのです。

 ようは、考え方次第なのです。私は、今の日本の教育も政治もいっぱい問題があると思っていますが、ただ、自分でやる気さえあれば、いろいろやりたい道に進めるだけのチャンスのある最低限の環境は整っていると思います。せっかくそのような現代の日本に生まれたのですから、親ガチャに失敗したなどと自分の出生を恨んだりしてはいけません。ヤル気を無くしてはいけません。他人を羨んだりしてはいけません。自分が自分らしく生きていくことが出来る道を真剣に探すことです。このようなことを幼い教育の場から、きちんと説明していかなければならないと思います。多様な社会で生きる道を探すという中では、受験は単なるひとつの手段でしかないことをきちんと理解させるべきです。人生にはいろいろな道が存在し、その中から自分に合った道を選んでいく先に、幸せな暮らしが待ち受けていることを。

投稿者

弱虫語り部

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