NHKで、特攻のドキュメントがありました。日本軍は南方戦線で敗戦が続き、起死回生を図り、戦闘機などに爆弾を積んで敵艦に突っ込むと言う考えられないような作戦を実行しました。終戦までの約10ヶ月程で、約4千名の尊い命が失われました。ほとんどが、予科練や学徒動員兵など二十歳前後の若者達でした。彼らは建前上、志願したとなっていますが、当時の学校の教師などがお国の為になれと扇動したことや、航空隊での意向調査で志願せざるを得なかったことなど、若者達の苦悩の末の決断だったことや、志願した兵を海軍省が成績などから選別した(成績最上位層は外されていた)ように命の選別をまるで物を扱うようにされたこと、敗戦濃厚になっていた状況で「特攻さえやっていれば何とかなる」と国民の批判の声を抑え込むことに利用し、国民の戦意維持に「一億総特攻」のスローガンとしたことなど、生々しい当時の事実が記録されていました。
軍上層部が自分達の作戦の失敗を取り返す為に、特攻という若者の命を利用して国民全員が本土決戦に向けて一丸となるように画策したのでした。しかし、それらも精神論でしかなく、米国の国力に勝てる訳はないという現実に目を逸らして、多くの国民のそれも若い人達の命を犠牲にした本当に非道で愚かな行為でした。
この中に多くの教訓を読み解かなければならないと思います。国を率いていた連中は、一般の国民の命を虫けらと同じようにしか見ていなかったこと、特に、次世代を担うべき若者を戦闘員としての練度の低さから、真っ先に犠牲に選んだこと、軍事色一色に染まった環境では、命を尊ぶべき教師達がこぞって自分の教え子に国の為に死ぬことは尊いと声を揃えていたこと、さらに町、村全体がそのような風潮の中で、誰も異論を叫ぶことも無く、弱い民衆に圧力をかけて戦禍に巻き込んだことなど国全体がまるで熱病が蔓延したように、狂った状態を作っていたのでした。
私ももしその時代に生まれていたら、国の為に命を捧げようとした伝染病に感染していたかもしれません。ほとんどの人はWEタイプの人間ですが、恐ろしいのは、WEタイプの人間は大勢に流されてしまうと言うことです。つまり、権力層のうまいプロパガンダに簡単に乗せられるのです。そしてそのことを権力者は利用しようとするのです。第二次大戦のとき、多くのドイツ人がユダヤ人を無差別に殺戮したことも、今のドイツ人の姿を考えますと信じられませんがそれが現実なのです。同じように、日本軍が欧米の列強からアジア諸国を救い、アジアを統一し、偉大なる大東亜圏を作るという手前勝手な論理を当時の日本人の多くが賛同していたのでした。
このようなことを起こらなくすることが本当に重要なのです。国内の法律は人を殺せば殺人罪という重罪ですが、戦争の場では、褒めたたえられることになります。この矛盾を見れば分かるように、戦争とは絶対に悪だと言うことを理解しましょう。権力者に任せているから、すぐに武力に頼ろうとするのです。彼らは、前線で命のやりとりをしませんので。命がかかっている国民同士が話し合えば、必ず分かり合えると思います。