NHKのドキュメント放送でドイツナチ党の宣伝相ゲッべルスが取り上げられていました。ゲッべルスは若い時に執筆業を目指していましたが、新聞社等に採用を拒否され続けていました。当時のマスコミはユダヤ系に占められていたそうで、そこで、彼はユダヤ人に対して大きな恨みを抱いたそうです。その後、ユダヤ人排除を掲げるヒトラーのナチ党に入党し、その才覚で頭角を現わして来たのです。彼がヒトラーの信望を篤く受けたのはナチ党のプロパガンダを任されて、多くのドイツ国民をナチ党支持に導いたことです。
彼のやり方の特徴は、目的の為であれば手段を選ばなかったことです。国民が困窮している原因はユダヤ人が要職を占めて、職と富を独占していると騙って、反ユダヤに国民を駆り立てました。真実はそんな単純なことではなかったと思いますが、国民が騙され易いようなデマを作り、さらにそのデマを本当らしくするような演出も巧みでした。そのようなプロパガンダで、痛ましいことに、国民はユダヤ人の商店、会社などを襲撃し、殺戮するような騒動を起こしました。ユダヤ人排除から始まったナチスの横暴は、さらにドイツ系住民が迫害されていると言う理由でポーランドに侵略しました(このやり方は現在のロシアによるウクライナ侵攻に似ていると思います)。次々とヒトラーが意図したことを実現出来るように、ゲッベルスは嘘を含む演出過多のプロタガンダを発して行き、それに伴い、ナチスドイツの侵略は広範な地域、ヨーロッパからアフリカ、ソ連へと拡大して行ったのです。戦局が不利になって行っても、国民を総攻撃へと駆り立てるプロパガンダを展開し、ベルリンが陥落する直前の10ヶ月で、開戦からのドイツ人戦死者の半分を占めるまでに自国民を死の淵に追いやったのでした。ドイツ首脳部にはほぼ敗戦を認識出来ていた段階での国民の死はほとんど無駄死にと言えるものでした(このことも日本の敗戦前の状況に似ています)。
ゲッベルスは宣伝に、演説、ラジオ放送、映画を巧みに活用していました。彼は国民の生命と生活を守るはずの本来の意味での政治家では無く、類まれな演出家でヒトラーの夢を叶える為には何でもしたペテン師だったのです。
人類はこれらの悲惨な経験を決して忘れてはいけません。そして、このようなことに陥らなくする為に、我々一般民衆が賢明にならないといけないのです。その為に、重要なことは教育の在り方です。同じ歴史を学ぶとしても、過去に起こった事象を年号や事件名で覚えるなんてことより、どんなことで人類に悲劇が訪れたか、そのカラクリを理解するべきだと思います。受験の為に単なる暗記で終わるようなことは無駄なことです。今の学校ではどうして歴史から学べる貴重な教訓をきちんと伝えていかないのでしょうか。そもそも日本史も世界史も、近代の世界大戦のときまで、時間切れできちんと教えずに、卒業してしまう学校が多いのにも呆れてしまいます。
我々は長い歴史の中で幾度も民衆が一部の権力者達による一見心に響くようなプロパガンダにより、多くの犠牲を虐げられたことをしっかり認識し、そうならない為に、そのような扇動に簡単に乗ってはいけないことを真剣に心に刻むべきなのです。