米国大統領選挙でトランプ氏が圧勝しました。この結果がもたらす影響について、いろいろと報道されています。また、各国首脳はトランプ氏への祝意を伝え、電話会談が続いています。日本の石破首相も電話会談でのトランプ氏の印象を述べていました。
一連の報道を聴いていまして、私が気になったことは大統領の権限の絶大さです。選挙戦で、トランプ氏は各国との貿易に関税をかける、特に中国には60%、メキシコからの自動車には100~200%の関税をかけるとも述べていました。自由貿易の流れに逆行する大胆な策ではありますが、米国の法律では、そのような重要事項でも、大統領の一存で決められるとのことでした。それこそ、TPPのような国際間での経済連携協定からの離脱、さらには温室効果ガスの規制などの国際的な取り組みから脱退することも可能であるとのことです。一番、驚いたのは、司法への影響力です。連邦判事や検察官の任命にも影響力が及び、トランプ氏が勝利した途端に、司法省がトランプ氏を被告とした二件の連邦法違反の事件について、起訴を取り下げる検討に入ったと報道されたことです。対象の二件とは、2020年大統領選挙の敗北を覆そうとして連邦議会占拠につながった事件と機密文書を自宅で違法に保管していたとされる事件です。選挙中に、トランプ氏は、大統領に就任すれば、特別検察官の解任や自身への恩赦で終結させると語っていました。前者の連邦議会占拠事件で有罪となったトランプ支持者を恩赦で放免することも述べていました。
強いリーダーシップを発揮する為に、大統領にある程度は権限が集中するのは仕方ないと思いますが、その影響が司法に及ぶのは行き過ぎだと思います。歴史は権限を一手に握った独裁者がどれだけの蛮行を働いたかを何度も目撃しています。そういう意味で、きちんとした三権分立がその歯止めになると思います。日本でも三権分立を盾前にしてはいますが、安倍政権時代に、検察庁幹部の人事に安倍元首相が介入したのは有名な話です。これも組織体制そのものが三権分立に反し、検察庁は内閣が統治する法務省の下部組織であることから、首相の人事介入を可能にしているのです。
だから、民主主義を標榜する国家を築くのであれば、三権分立については厳密な権限分離をしなければならないということだと思います。
そして、これらの根本にある精神とは、権力を持つものが、自身の待遇や自身の利益になることを自分自身で決められるようにしないと言うことです。この点が、今の社会では曖昧になっていまして、そのことにより、自分自身を守ることに権限を利用するものが多数いることになっています。日本の国会議員が自分達の高報酬や特権についてはなかなか議論しないのもそういうことです。民間企業でもそのようなことを排除する為に、企業トップや役員の報酬は第三者機関の報酬委員会が決定するような形が出来つつありますが、まだまだ形式的な感を拭えていないのが実態かもしれません。それほど、この問題は難しい問題なのです。つまり独裁的なリーダーや一部の特権階級を生む土壌はどうしても残っているのです。
これをきちんと排除すれば、本当の民主主義の実現に近づけると思いますが、やはり既得権益を守りたい抵抗勢力が強いのです。